「iD」は後払い式の電子マネーで、チャージの手間がなくクレジット利用ポイントも貯まる。クレジットカード本体にその機能を搭載しているものであれば、カードを複数枚持つ必要もなく、レジで素早い支払いが可能になり、日常的な支払いで便利だ。ここでは、「iD」とはなにか、使い方やメリットを解説。さらに「iD」機能搭載でおすすめのクレジットカード3種を還元率や割引の観点から紹介しよう。

目次
1,iDとは何か?
2,iDの6つのメリット
3,iD機能搭載クレジットカードおすすめ3選
    3-1,Orico Card THE POINT
    3-2,三井住友カード
    3-3,dカード
4,iD払いの3つのデメリット
5,特にドコモユーザーはメリットが大きい

1,iDとは何か?――Apple Payでもおなじみの決済手段

「iD」は後払い式の電子マネー

「iD」とは、NTTドコモが提供する非接触型電子マネーのこと。使った分だけを後払いする「ポストペイ型」が基本だが、事前にチャージする「プリペイド型」、口座残高の範囲内で使える「デビット型」もある。クレジットカードに紐づけしたものは「ポストペイ型」だ。

クレジットカードに紐付けした「iD」の利用方法は4つ

クレジットカードに紐づけしたポストペイ型の「iD」はコンビニなどで使うときに、4つの方法で利用することができる。

  • クレジットカードそのものを決済端末にかざす――「iD」機能が搭載されたクレジットカード
  • 「iD」専用のカードを決済端末にかざす――追加カードとして発行された「iD」専用カード
  • スマホを決済端末にかざす――「iD」対応クレジットカードを登録したApple Pay、Google Pay
  • 「iD」アプリを起動して決済端末にかざす――対応クレジットカードを登録したAndroid「iD」アプリ

このうち、最も手間がかからないのが「スマホを決済端末にかざす」タイプ。Apple PayやGoogle Payでの支払いがこれに該当するが、Apple PayやGoogle Payに登録したクレジットカードで支払うときは、必ず「iD」か「QUICPay」、あるいは「VISAタッチ決済」(Google Payのみ)で決済することになっている。

最終的にどの決済方法になるかは、クレジットカードごとに決まっている。決済方法を確認したい場合は、Apple PayではWallet を開いてカードを表示すればいい。「iD」や「QUICPay」など、Apple Payでの支払いで使われる決済サービスのロゴが券面上に示されている。

2,iDの6つのメリット――クレジットカードのポイントが貯まる

ここでは、クレジットカードに紐づいたポストペイ型の「iD」のメリットを紹介しよう。

メリット1,少額決済をスピーディーに行える クレカ支払いよりも素早い

読み取り端末にカードやiPhoneなどを軽く触れる、もしくはかざすだけで決済できるので、非常にスピーディーに支払いが完了する。

クレジットカード決済の場合は、少額ならサインレスで支払いが完了する店舗も増えているが、端末にカードを差し込む必要があるので「iD」決済と比べるとレジで少し時間がかかってしまう。

メリット2,利用できる店舗が多い 全国100万店舗以上で使える

非接触型電子マネーの中では利用できる店舗が比較的多く、2020年3月時点で約111万1,000台の決済端末で「iD」が利用できると公表されている。

代表的なチェーン店に、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、ガスト、吉野家、マクドナルド、ロッテリア、ドトールコーヒー、デニーズ、モスバーガー、エクセルシオールカフェ、イオン、イトーヨーカドー、エネオス、マツモトキヨシなどがある。

メリット3,対応しているクレジットカードが多い 代表的なカードはほぼ対応

「iD」に対応しているクレジットカードは比較的多い。発行カード会社とその代表的なカード、対応している媒体についてまとめてみた。

カード
会社名
カードの
一例
iD専用カード
または
iD機能付き
クレジット
カード発行
Apple Pay
対応
Google Pay
対応
iDアプリ
対応
イオン銀行 イオンカード ×
NTTドコモ dカード ×
オリエント
コーポ
レーション
Orico Card
THE POINT
× ×
クレディ
セゾン
セゾンカード
インター
ナショナル
× × ×
ユーシー
カード
UCカード × × ×
JFRカード 大丸松坂屋
カード
× × ×
大和ハウス
フィナ
ンシャル
HeartOne
カード
× × ×
ペルソナ ペルソナ
STACIA
カード
× ×
ポケット
カード
ファミマ
Tカード
×
三井住友
カード
三井住友
VISAカード
SMBC
ファイナンス
サービス
セディナ
ゴールドカード
×
ゆうちょ銀行 JP BANKカード ×
ライフカード ライフカード ×
VJAグループ 地方銀行発行
クレジットカード
※カード発行会社によって異なる

イオン、NTTドコモ、クレディセゾン、三井住友カードなどが発行するカードでは「iD」機能を利用できる。

メリット4,チャージ残高を気にする必要がない 支払いストレスを軽減できる

クレジットカードに紐づいたポストペイ型の「iD」では事前にチャージする必要がなく、残高不足を気にする必要もない。

プリペイド型だと残高が足りなかったときに決済できず、もたついてしまうこともある。また、残高が足りるかどうか事前にチェックする必要があるが、ポストペイ式であればその手間はない。

メリット5,クレジット利用ポイントが貯まる ポイント獲得がシンプル

クレジットカードに紐づいたポストペイ型の「iD」では、支払いに利用した分だけクレジット利用ポイントが貯まる。

一方、事前にチャージが必要な電子マネーの場合は、チャージ分に対するポイント付与がなかったり、ポイント付与に上限があったり、ポイント付与率が低く設定されていたりすることがある。クレジットカードに紐づいたポストペイ型の「iD」では、通常そのような制約はない。

スピーディーに支払いたい、かつポイントもしっかり貯めたいという人にぴったりだ。

メリット6,セキュリティ面でも安心 紛失の際はロックできる

AndroidスマートフォンやiPhoneで「iD」を搭載している端末を紛失した場合、その決済機能を事前にロックしたり、遠隔操作でロックしたりすることができる。また、クレジットカード搭載機能や専用カードで「iD」を使っている場合は、カード会社へ連絡してサービスの利用を一時中止できる。

いざというときでも、不正利用防止のための手段が用意されているのだ。

3,iD機能搭載のおすすめクレジットカード3選 

ここからは、別途「iD」専用カードを持つ必要がなく、Apple Payなどに登録する手間もない「カード自体にiDが搭載されたクレジットカード」を3枚紹介していこう。

3-1,Orico Card THE POINT――iDとQUICPayのダブル搭載で利便性が高い

・基本スペックや還元率などの特徴 通常ポイント還元率が高い

「Orico Card THE POINT(オリコカード ザ ポイント)」は年会費無料で作れ、国際ブランドをMastercardかJCBから選べるクレジットカードだ。

1%という高いポイント還元率が特徴で、入会後6ヵ月間はそれが2%にアップする。また、ポイントサイト「オリコモール」の利用では、0.5%の特別加算分と各ショップの加算ポイント(0.5%~)が加わり、ポイント還元率は合計で2%以上になる。カード名のとおり、ポイントが貯まりやすいカードと考えていいだろう。

・iD利用時の特徴 電子マネーダブル搭載で便利

カード自体に「iD」機能が搭載されているほか、同じくポストペイ型の電子マネーである「QUICPay」の機能も搭載。「iD」に対応していない店舗でも「QUICPay」を使ってスピーディーに支払いができ、同様にクレジット利用ポイントを貯められる。これは、このカード独自のメリットと言えるだろう。

・ポイントの使い道 有効期限は1年

注意したいのは、ポイント有効期限が1年間で、500ポイントから交換できるという点だ。ポイント交換対象は、Amazonギフト券やApp Store & iTunes ギフトカードのほか、WAON、楽天ポイント、Tポイント、dポイント、Pontaポイント、JALマイル、ANAマイルなど幅広いので、メインカードか準メインカードとして利用して、貯まったポイントをこまめに交換したい。

国際ブランド Mastercard
JCB
年会費 無料
家族会員無料
ポイントサービス オリコポイント
通常ポイント還元率 1%
ポイント交換対象 Amazonギフト券
dポイント
JAL/ANAマイル など
空港ラウンジサービス なし
付帯保険 ※紛失・盗難補償のみ付帯
追加カード ETCカード
家族カード
電子マネー 【カード搭載】
iD
QUICPay
【Apple Pay経由】
QUICPay

3-2,三井住友カード――コンビニ2社とマクドナルドで2.5%還元

・基本スペックや還元率などの特徴 年会費割引特典が豊富

「三井住友カード」の国際ブランドはVISAかMastercardから選べ、年会費は1,375円(税込)で初年度は無料。年会費には

  • WEB明細の利用で550円(税込)割引
  • カードの利用額が100万円以上300万円未満で年会費半額

という割引が用意されている。この2つは比較的容易にクリアでき、その場合の年会費は137円(税込)になる。以下の条件を満たせば、翌年度以降も無料で利用することができる。

  • 自動リボ払いサービス「マイ・ペイすリボ」登録と年1回以上の利用
  • 前年度のカード利用額が300万円以上

・iD利用時の特徴 iD支払いでポイントが5倍に!

このカードには「iD」がカード本体に搭載されているほか、「iD」専用カードの発行、Apple PayやGoogle Pay、「iD」アプリでの利用もできる。

また、セブン-イレブン、ローソン、マクドナルドでクレジット払いや「iD」払いをするとポイントが5倍(ポイント還元率2.5%)になるので、少額決済が多くなりやすい「iD」の利用においてメリットが大きい。

・ポイントの使い道 キャッシュバックも選択できる

貯めたVポイントは賞品のほか、Amazonギフト券やApp Store & iTunes ギフトカード、Google Play ギフトコードなどのオンラインギフトカード、楽天ポイント、Tポイント、dポイント、Pontaポイント、nanacoポイント、楽天Edy、WAONポイント、ANAマイルなどに交換できる。

また、Vポイントを「iDバリュー」に交換した上で、「iD」利用額から差し引く形でキャッシュバックを受けることもできる。

国際ブランド VISA
Mastercard
年会費 1,375円(税込)
※初年度無料・条件クリアで翌年度も無料
家族会員440円(税込)
※1人目初年度無料・条件クリアで翌年度も無料
ポイントサービス Vポイント
通常ポイント還元率 0.5%
ポイント交換対象 Amazonギフト券
dポイント
ANAマイル など
空港ラウンジサービス なし
付帯保険 海外旅行傷害保険(利用付帯)
ショッピング保険(利用付帯)
追加カード ETCカード
家族カード
バーチャルカード
電子マネー 【カード搭載】
iD
【別途カード発行】
iD
WAON
PiTaPa
【Apple Pay・Google Pay経由】
iD

3-3,dカード――条件クリアで「iD」が7%還元に

・基本スペックや還元率などの特徴 通常還元率をアップする方法が多い 

「dカード」は年会費無料で作れ、国際ブランドはVISAかMastercardから選べる。「iD」に関してはカード本体に機能が搭載されているほか、Apple Payやスマホの「iD」アプリでも利用できる。

クレジット利用で貯まるポイントは、ドコモが広く展開する共通ポイントのdポイント。dポイント加盟店では、カード提示によって付与されるポイントと合わせて「ポイント2重取り」ができる。

特にローソンでは

  • クレジット利用ポイント1%分
  • 「dカード」提示ポイント0.5%(0:00~15:59の利用)~1%(16:00~23:59の利用)分
  • 「dカード」(iD含む)決済特典としての3%オフ

が適用され、合わせて4.5~5%になる。ローソンのような少額決済が多い店舗における「iD」払いで超高還元率になるのは、大きなメリットと言えるだろう。

・iD利用時の特徴 最大で7%還元、ローソンなら11%還元も 

「dポイント スーパー還元プログラム」として、「d払い」や「iD」による支払いに対し、通常のポイントに加え、最大6%のポイントが還元される仕組みもある。最大還元率を実現するには以下の条件をすべてクリアする必要があるが、いくつかクリアして数%アップするだけでもメリットがある。

還元率アップ条件 還元率
当月のdポイントクラブステージが
プラチナステージ
+1%
前月にdポイントを貯めた回数の合計 50~99回:+0.5%
100回以上:+1%
前月の以下のネットショッピングの合計金額
①d払いネット
②ドコモ払い
③SPモードコンテンツ 決済
④dマーケットなど(月額・都度課金)
2万~4万9,999円:+1%
5万円以上:+2%
前月のdカード請求額 10万~19万9,999円:+1%
20万円以上:+2%
合計還元率 最大+6%

すべての条件を満たした場合、「iD」払いは7%還元になり、ローソンなら11%還元になる。

・ポイントの使い道 iD利用分へのキャッシュバックもできる

貯めたdポイントは賞品への交換のほか、ドコモのサービスやdポイント加盟店の支払いに充当でき、他社ポイントやマイルにも交換できる。「iDキャッシュバック」として、「iD」利用分の支払いに充当することもできる。

国際ブランド VISA
Mastercard
年会費 無料
家族カード無料
ポイントサービス dポイント
通常ポイント還元率 1%
ポイント交換対象 Pontaポイント
iDキャッシュバック
JALマイル など
空港ラウンジサービス なし
付帯保険 dカードケータイ補償(利用付帯)
お買い物あんしん保険(利用付帯)
追加カード 家族カード
ETCカード
電子マネー 【カード搭載】
iD
【Apple Pay経由】
iD

4,iD払いの3つのデメリット――暗証番号入力が求められることも

「iD」搭載のクレジットカードを持つことで、日常生活がより便利、かつお得になる。利用に際して、年会費はかからないので気軽に利用できるが、あえてデメリットを挙げるとすれば、次の3点となるだろう。

デメリット1,クレジットカードと比較すると利用可能店舗が少ない

「iD」を使える店舗はほかの電子マネーと比べて比較的多いがトップシェアというわけではない。また、クレジットカードが使える店舗に比べるとやはり少ない。そのため、無条件にベストな支払い方法と言い切ることはできない。

デメリット2,暗証番号入力が必要なケースがある

基本的には決済端末に軽く触れるだけで支払いは済むが、一定額以上の支払いでは暗証番号の入力が必要なケースがある。セキュリティの観点からそうなっているのだが、その場合、決済時にかかる手間はクレジットカードと変わらず、「iD」を利用する必然性が薄れてしまう。

デメリット3,「楽天Edy」と間違われることがある

レジで支払い方法を「iDで」と告げたとき「Edyで」と聞き間違えられることが少なくない。ささいなことだが、何度も聞き間違えられるとストレスとなる。

5,特にドコモユーザーへのメリットは大きい

電子マネーのチャージ忘れでレジで手間取った経験がある人には、このポストペイ式の「iD」はおすすめだ。

また、ドコモの提供する電子マネーということもあり、ドコモユーザーにとってはポイント倍付などの点で特にメリットが大きい。ドコモを使っているなら、ぜひ「dカード」+「iD」という組み合わせを検討してみてほしい。ポイントの貯まり方がぐっと上がるはずだ。

いずれにせよ、「iD」を使いこと自体に関しては大きな手間や金銭がかかるものではない。まずは自分の持っているクレジットカードに「iD」があるかどうか確認し、気軽に利用してみてもらいたい。

 

モリソウイチロウ
執筆・モリソウイチロウ
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカードに詳しく、専門サイトでの執筆も行っている。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカードに詳しく、専門サイトでの執筆も行っている。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。

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