VR(仮想現実)での没入感をさらに高めるためには触覚の導入が必要です。

そして多くの人は、大雑把な触覚ではなく、「まるで現実で触っているかのような繊細な触覚」を望んでいます。

もし実装されるなら、「現実には存在しないキャラクター・生き物と触れ合う」など、メタバースならでは楽しみが得られるでしょう。

香港城市大学(CityU)機械工学科に所属するジャンバオ・ヤン氏ら研究チームは、現実に近いレベルで繊細な触覚が得られる薄型グローブを開発しました。

このグローブはVRだけでなく、視覚障がい者や宇宙飛行士のサポートなど、幅広い可能性を秘めているようです。

研究の詳細は、2022年9月9日付の科学誌『Science Advances』に掲載されました。

「複雑で繊細な刺激」がVRにリアルな触覚を与える

求めているのはリアルな触覚
Credit:Canva

私たちがVRの触覚グローブに求めているのは”リアルさ”です。

ただ「触っていることが分かる」グローブではなく、「何に触っているか判別できる」グローブが欲しいのです。

そのため、大雑把に振動したり圧力が加わったりするだけのグローブは魅力的ではありません。

人間の柔らかい肌、動物の被毛の方向、野球ボールの滑らかな球体面と縫い目など、細かな違いを体感できる繊細な触覚グローブが求められています。

では、これを実現させるにはどうすれば良いのでしょうか?

1つのポイントは、刺激の解像度を高めることにあります。

触覚グローブは人間の皮膚を機械的・電気的に刺激することで作用しますが、より多く、より複雑な刺激を与えることで、触覚のリアルさが増します。

刺激ポイントが多ければ多いほど、リアルな触感を生み出せる。イメージ
Credit:Canva

例えば、手のひらに対して1つのポイントにしか刺激を与えられないなら、触覚グローブの装着者は、「手のひらに何かが当たったか、当たってないか」しか判断できません。

ところが、手のひらに対して100のポイントを別々に刺激できるとしたら、装着者は「手のひらの親指側を押された」「最初は指の腹で押されたが、次は爪の先端で刺された」「手のひらに文字を書かれた」などと複雑な認識が可能になります。

「解像度の高い画像」と同じように、刺激の解像度が高まれば、触覚のリアルさが大きく向上するのです。