台風に近づく方が安全なワケとは?

シェパード氏は、この大胆な行動について、「台風の追い風に乗ることで、内陸部に吹き飛ばされるのを回避している可能性が高い」と指摘します。

北半球で、台風は反時計回りに回転しながら北上します。

たとえば、ここで台風の「向かい風」に乗ってしまうと、オオミズナギドリは陸地の方に吹っ飛ばされて、地上に墜落したり、障害物に衝突したり、あるいは、飛来する物にぶつかる危険性が高まるのです。

そこでオオミズナギドリは、台風の「追い風」に乗ることで、日本海側の陸地に近づくのを避けていると考えられます。

台風の風は中心部に向かって渦を巻きながら吹いています。

”台風の目”にわざわざ近づいていったオオミズナギドリは、台風の接近時に、”台風の目”の移動コースと、日本列島の陸地に挟まれている状態でした。

この場合に追い風に乗ると、その進路は自然に”台風の目”に近づくコースになると予想されます。

こちらは、”台風の目”とオオミズナギドリの移動を示した映像です。

この結果を見ると、オオミズナギドリにとっては台風の目に近づくことが台風を凌ぐための有効な戦略となっている可能性があります。

ただし、”台風の目”に向かって飛ぶという戦略は、おそらくオオミズナギドリのように、高速で飛行でき、強風にも適応した海鳥にのみ有効な選択肢である、と研究チームは指摘します。

米コーネル大学(Cornell University)の鳥類学者で、本研究には参加していないアンドリュー・ファーンズワース(Andrew Farnsworth)氏は「直感に反しているように見えますが、オオミズナギドリの生態からすれば、理にかなった戦略なのでしょう」と述べています。

実際現在のところ、他の海鳥たちでは同様の行動は見られません。

台風は空に生きる鳥たちにとっても危険な存在です。

今回の報告からは、種ごとに鳥類の台風対策が大胆に異なっていることがわかります。

飛行スタイルやエネルギーコストの異なる海鳥たちが、台風の接近やその規模、風の強さを、どのように察知し、どんな対策を取っているかを正しく理解するには、今後さらなるデータが必要となるでしょう。

参考文献

Some seabirds survive typhoons by flying into them
How we tracked one small seabird species’ remarkable flight into a typhoon

元論文

Pelagic seabirds reduce risk by flying into the eye of the storm