現在は「ハイブリッドワーク」が主流。オフィス回帰の流れも強まっている
現在は空室率が高まっているものの、「オフィス不要論」が優勢というわけではありません。実際、当社に寄せられたワークプレイス関連の相談のうち、オフィス縮小に関する問い合わせは20%未満。相談のほとんどは、レイアウトの変更や内装リニューアル、もしくはオフィスの拡張移転に関する内容です。
昨今のスタートアップでは、100%出社あるいは100%リモートというスタイルではなく、出社とリモートを組み合わせる「ハイブリッドワーク」といった働き方が主流です。つまり、オフィスをまったく必要としなくなったのではなく、むしろ「集まる場」としてオフィスを再構築しているケースが多いのです。
さらに、一度オフィスを解約した企業が再度オフィスを構える動きも生まれています。その背景には、コミュニケーション課題の露出、従業員の帰属意識の低下、新入社員の育成難化などがありますが、この話については、また別の機会に詳しく解説いたします。
スタートアップに人気なオフィスエリアの現在
先ほど2019~2021年までの東京23区の空室率について触れましたが、現在スタートアップから人気があるエリアの空室率はどうなっているのでしょうか。いくつか例を挙げてご紹介したいと思います。
まずは、渋谷。スタートアップに最も人気があると言っても過言ではありません。コロナ前は、まさに「空きが出ても一瞬で埋まる」オフィス激戦区でした。
コロナ後は少し空室が増えましたが、その分もともと渋谷に移転したかった企業が転入してきているので、空室率はさほど上がっていません。今でも変わらず、人気は高いままです。
次に、六本木。こちらはスタートアップにとって、渋谷の次に選択肢として挙がりやすいエリアです。六本木と言えば、六本木ヒルズやミッドタウンなどの印象が強いかもしれませんが、同エリアは中小規模のオフィスビルが豊富で、いわゆる「出世ビル」と呼ばれるようなメガベンチャーの発祥ビルが数多く存在します。
コロナ後は、もともと六本木にいたスタートアップが、空室が増えた渋谷に移転するケースが増えている印象です。
五反田も人気エリアの1つです。コロナ前、「五反田バレー」で注目を集めていた同エリアでは、オフィスの空室がかなり少なくなっていましたが、コロナ後はオフィス解約・縮小が増えたことで空室が増加。
現在は「スタートアップの聖地」だったTOCビルの建て替えを控えていることから、入居企業が他エリアへ流出していく可能性があります。もともと渋谷・六本木に比べて賃料が安いことが人気の理由だったため、そこまで五反田にこだわらないスタートアップも多かったようです。
また、茅場町や大手町などのエリアも、新たなスタートアップ集積地として注目を集めつつあります。もちろん、同じスタートアップとはいえ業種によって、好むエリアは分かれるものです。
渋谷・六本木・五反田は情報発信系・エンタテインメント系・ゲーム系のスタートアップから、茅場町・大手町はバイオテクノロジー系・金融フィンテック系・ビッグデータ運用系のスタートアップから人気があるようです。
スタートアップが集まるエリアは、オフィス市場の動きが早く、その時々の社会情勢に応じて変化し続けています。当社は今後も引き続き、オフィス市場の動向を追っていきたいと思います。
<著者プロフィール>
阿久根聡
47ホールディングス株式会社 代表取締役九州大学卒業後、新卒で富士銀行(現 みずほ銀行)に入行。2004年に創業間もないエス・エム・エスに入社、翌年に取締役に就任。2013年に副社長として47へジョインし、2015年より同社代表取締役を務める。2019年からは47グループ4社の代表取締役を兼務している。
会社URL:https://47co.jp/