サンマの天敵と回避術
サンマの捕食する生き物でいうと、より大型のサカナであるマグロ類、そして哺乳類のクジラ、海鳥などがその最たる例です。様々な生き物によく捕食されることから、サンマは食物連鎖のなかで重要な役割を担っているとも言われています。
しかし、サンマもそう簡単には捕食されないために、天敵から逃げる際にはトビウオのように水面から飛び出し、海面上を跳ねるように泳ぐこともあるそうです。
もしかしたら今後、サンマも生きるために独自の進化をしていくかもしれません。
サンマ食の歴史
日本を代表する大衆魚ではありますが、庶民がサンマを食べるようになったのは江戸時代中期頃だと言われています。
江戸時代の百科事典である『和漢三才図会』には、サンマについて「魚中の下品(げぼん)なり」という記述があり、サンマは当時庶民の食べ物であり、武士など上流階級の食べ物ではないとされていました。
落語の「目黒のさんま」は、それまでサンマを食べたことのなかったお殿様が、鷹狩りに出かけた先で偶然食べたサンマのおいしさが忘れられずに、滑稽な言動をするという噺(はなし)です。
サンマには胃がない
サンマの体は細長く、くちばしのような口をしているのが特徴ですが、それ以外にもサンマの体には大きな特徴があります。それは「胃が無い」というものです。
短く直行する腸が直接、肛門に繋がるため、摂食した餌は、20分から30分程度の短時間で消化され体外に排出されます。
このようなサカナを『無胃魚』といい、他にもコイやメダカやなども同じように胃がありません。そのため、サンマはハラワタまで食べることが出来るのです。
サンマ不漁の原因は?
この日本海域におけるサンマの不漁の原因は、環境問題や乱獲など各方面でさまざまな意見が述べられていますが、共通して深刻な問題とされているのが地球温暖化による影響だと言われています。
サンマの水揚げ量は2010年あたりから年間20万トンを下回るようになり、ここ数年は10万トンを満たない年も珍しくありません。
2020年には2万9566トンとピーク時の10%を切る数字を記録しました。
数字だけを見ると、サンマが絶滅しかけているのではないかと思うほどですが、実際の原因は、秋に親潮に乗って南下してくるサンマが暖水塊(だんすいかい)の発生による影響が大きいことがわかってきています。
暖水塊とは、日本の太平洋沖を北上する暖流の黒潮が高温にさらされることで渦になった状態で、直径200kmに達することもあり、この暖水塊が日本海域に発生しているためサンマの南下を阻んでいることが一因だと言われています。
気象庁の発表によると、2020年までの100年間にわたる海域平均海面水温(年平均)の上昇率は+1.16℃で、サンマの水揚げ量が多い釧路沖の上昇率を見ると+1.25℃とさらに高くなっています。
このように温暖化による海面温度の上昇によって徐々にサンマの回遊ルートが変わってしまったことで、近年の深刻な不漁へつながっていると考えられています。