西岡克(フリーランス)


三菱地所(東京都/吉田淳一社長)と中川政七商店(奈良県/千石あや社長)は、学生が企画・運営する地域産品のセレクトショップを東京・大手町に開いた。日本全国を6ブロックに分け、2カ月ごとに異なる地域を特集し、展開商品を入れ替える。第1弾は九州・沖縄地方の商品を集め、10月2日まで販売。ワークショップなども開く。来年8月までに日本全国各地の雑貨や食品などを一通り紹介する。

学生が仕入れ、販売するセレクトショップ

学生が仕入れて販売するセレクトショップを中川政七商店と三菱地所が始めた理由とねらい

(画像=店舗は今年3月に竣工した銭瓶町ビルディングの1階にオープンした、『DCSオンライン』より 引用)
 店名は「アナザー・ジャパン」。三菱地所が大手町で2027年度の完成を目指して再開発を進めているTOKYO TORCH(トウキョウトーチ)と呼ぶ街区の一角に建設されたビル1階に8月2日にオープンした。売場面積は約40坪。

 三菱地所がプラットフォームを提供。中川政七商店が教育・運営サポートを行い、公募した1期生18人の学生が商品の仕入れから収支管理、店舗運営、プロモーション、接客販売まで手掛ける。

 全国を①九州、②北海道・東北、③中部、④関東、⑤近畿、⑥中国・四国の6ブロックに分類し、各ブロック出身の学生を3人ごとにチーム編成。8月から2カ月ずつそれぞれの地域の地域産品を展開する。

 商品は各チームの3人が現地で仕入れる。九州の場合、3人の現地滞在日数は延べ83日に及んだ。店頭には当該地域チームのメンバーと残りの15人が交代で立ち、接客に当たる。

 売上目標は飲食を除く物販だけで月間500万円。スタート時の仕入れ先は60社強。原則として食品以外の商品は買い取りではなく、委託販売として仕入れ交渉する。

 学生たちをサポートする「エリアメンター」と呼ぶ人物をブロックごとに置き、水先案内人の役割を果たす。例えば九州エリアでは、地元デザイナーの佐藤かつあき氏がコンセプト設計や商品セレクトのアドバイスをした。

第1弾は九州・沖縄の地域商品を展開

学生が仕入れて販売するセレクトショップを中川政七商店と三菱地所が始めた理由とねらい

(画像=「アナザー・ジャパン」の店内。酒や調味料、食器、食品、インテリア、アクセサリーなど約350点がラインアップされている(撮影:西岡潔)、『DCSオンライン』より 引用)
 第1弾は「アナザー・キュウシュウ」として、10月2日まで九州・沖縄地域の商品約350点を販売する。店内には飲食店企業が運営するカフェも併設している。

 アナザー・キュウシュウでは学生3人の故郷での実体験から着想を得て、テーマを「宴」と設定。「キュウシュウという宴が、あなたを待ってる。」をコンセプトに定めた。さらに宴を7つのシーンに分類し、それぞれに合う商品を店内の陳列棚に配置した。

 7つのシーンと展開商品は①乾杯(各地の酒や酒器、つまみや調味料など)、②宴席(大分、福岡、佐賀、沖縄4産地の特色ある器など)、③彩り(お香や風鈴など、宴の時間・空間を五感で楽しむ品)、④装い(宴に出掛けるときの華やかなアクセサリーや洋服)、⑤お祭り(下駄や花火、郷土玩具など夏の宴を盛り上げる品)、⑥贈り物(有田焼のカップ酒や点字レターセット)、⑦余韻(お茶や菓子で宴を締める場面をイメージした品)―となっている。

 店内では「あなたの宴を選びます」と銘打って、客の相談に乗り、ニーズに合った商品を提案する。試食販売や実演販売も実施。週末には有料の参加費を徴収し、佐賀県神埼市に伝わる素焼きの人形である尾崎人形の絵付け体験や大分県別府市の竹細工の工作体験といったワークショップも開く。

 アナザー・キュウシュウ終了後、客と学生が実際に九州を旅行する「宴の旅」と名付けた現地ツアーも企画しているという。