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提案力を強化するトレーニング
提案力が身につけられたのはなぜ? 筆者の場合

提案力を強化するトレーニング

では、こういった提案力を支えるスキルはどうしたら伸びるのでしょうか。ここからは、筆者が実践してみて高い効果を感じた、「提案力を養うためのトレーニング方法」について解説します。

トレーニング1. 相手の相談を要約しよう

まず誰かがあなたに相談をしてきたとき、その相手の話を要約してみましょう。例えば、桃太郎を要約すれば「桃から生まれた男の子が鬼を成敗する話」です。人の悩みはここまで単純化できませんが、迷ったり寄り道したりする話の中で、一番相手が言いたいことが何なのか考える習慣をつけることが大切です。

具体的な手法として、人の話を聞きながら箇条書きでメモを残すのがおすすめです。打ち合わせなどの中で相談が出てきたら、できるだけシンプルに内容を要約しながらメモするよう心がけてみましょう。このトレーニングは、傾聴力を高めるのに役立ちます。

トレーニング2. 一問一答形式で相手の相談の解決方法を考えよう

次に、その要約した相談に対してひとつの解決策を考えてみましょう。

例えば、「よく眠れない」と悩んでいる人がいたとして、あなたは経験上「枕を変える」「ベッドでスマホを見ないようにする」「お風呂に入ってから寝る」といった解決策を思いついたとします。

どれも効果があるかもしれませんが、相手の生活習慣などによっては実現が難しいものもあるかもしれません。相談者から関連情報を引き出したり、これまでの話から想像したりして、ひとつの解決策に絞りましょう。こうして解決策に優先順位をつけるプロセスで、自然と洞察力が養われます。

トレーニング3. 提案をシミレーションしよう

提案は一方的なものではなく、相手との対話の中に組み込まれるものです。したがって、提案力を高めるためには、相手の返答や感情の動きによって柔軟に内容を調整することも大切です。

ときには準備のない状態でいきなり提案するシーンもあるかもしれませんが、ビジネスの場合、多くは提案前に準備期間があります。この準備期間中に、提案したあとの相手との会話や感情の変化、自分の対応などを事前に想像しましょう。何パターンかシミュレーションしておくことで、本番も柔軟な提案ができます。また、このパターンを増やす努力をすれば、語彙力や論理的思考力が身についてきます。

提案力が身につけられたのはなぜ? 筆者の場合

社会人になりたての頃、私は自分の意見を通すことにばかり執着し、相手の言葉をまるで聞けていませんでした。自信満々で出した提案がニーズと食い違うことも多く、よく上司から「人の話をちゃんと聞けよ」と怒られていたのを覚えています。

相手の言葉を一生懸命聞き取って、意味は理解しても、何を提案すればいいかわからない。この状態に危機感を覚え、何が足りていないのか書籍などで調べた結果、自分には提案力がないということに気付きました。ここで紹介したトレーニングも、そんな葛藤の中でいろいろと試してみて、効果があったと感じるものです。

日頃から相手の言葉を要約してログを残し、その答えを自分なりに考えてみる。それを提案する時間を想像してみる。この3ステップを習慣化し、社会人三年目以降は社内外問わず提案がスムーズに通るようになりました。もちろん通らないこともありましたが、その場合は何が問題だったか分析しやすくなったと思います。

その後フリーランスになってからも、私はこの提案力に支えられたキャリアを歩んできました。営業活動が苦手で、企画の発想もそこまで独自性がない。こんな私でも絶えずお仕事をいただいているのは、提案力をフル活用してニーズに合ったものを提供できているからです。

私の場合、もともと提案力がないところから意識的に磨いた結果、いつの間にか自分のキャリアの支えになった、という形です。ですので、いま提案力がないことを悩んでこの記事を読んでいる人には、そういう人こそ提案力を高める素地があるよ、と伝えたいです。

また、提案力は複合的なスキルなので、自分に欠けている部分を意識的にトレーニングするだけで、提案力が劇的に伸びることもあります。例えば私の場合は、傾聴力が欠落していることが原因だったので、「本当は何を伝えたいのか」考えながら話を聴くようになってから、提案の質が格段に向上しました。