新型コロナやウクライナ侵攻、最近だと、政治と宗教をめぐる問題など、世の中は不安をあおるニュースで溢れかえっています。

それに伴い、ネガティブなニュースを目にする機会も増えたことでしょう。

しかし、悪いニュースばかりを受け取ることは、多大なストレスとなり、心身を疲弊させることがわかっています。

こうした、ネット上のネガティブなニュースを消費し続けることを「ドゥームスクローリング(Doomscrolling)」といいます。

最近も、米テキサス・テック大学(TTU)の研究で、ドゥームスクローリングの機会が多い人は、心身の健康状態が悪くなりやすいことが示されました(Health Communication, 2022)。

では、ネットが普及し、ネガティブなニュースが目につきやすくなっている現代において、私たちはどう対処すればいいのでしょうか?

豪ディーキン大学(Deakin University)、ロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)は今回、オーストラリア南東部・ビクトリア州の人々を対象に、長期にわたるロックダウンの中で、ドゥームスクローリングにどう対処したかを調査しました。

この報告はついつ見てしまいがちなネガティブなニュースを避けるために、参考になるかもしれません。

研究の詳細は、2022年1月5日付で学術誌『Journalism Studies』に掲載されています。

ネガティブなニュースの過剰受信はメンタルを疲弊させる

不安定な世の中にあって、ドゥームスクローリングは、まったく正常な反応と言えます。

自分の周りで起こる劇的な出来事を理解したいと思うのはしごく当然ですし、パンデミックを含む災害時など、細かな情報収集は必要です。

一方で、あまりに長い間、ネガティブなニュースに触れることは、心身にとって良いものではありません。

近年では、ネガティブなニュースの過剰受信が健康に悪影響を及ぼすことを示す研究が増えています。

たとえば、ある研究では、新型コロナに関するニュースを多く消費する人ほど、ストレスや不安レベルがより高いことが示されました。

また、アメリカでは、9.11同時多発テロやボストンマラソン爆弾テロ事件など、大惨事に関するニュースに持続的に晒されることが、精神衛生上、有害な結果を引き起こすことがわかっています。

ドゥームスクローリングは、心身を疲弊させる
Credit: canva

一方でいくつかの研究は、ネガティブなニュースの受信制限が心身の健康を守るのに有効であることを明瞭に示しています。

これは悪いものを摂取しないので、当然の結果と言えるでしょう。

しかし、問題は「どうやってドゥームスクローリングを防ぐか」です。

そこで、ディーキン大とRMITの共同研究チームは、累計で世界最長のロックダウンを経験したビクトリア州の人々を対象に調査を開始。

その結果、ロックダウンが始まり、自宅時間が増えたことで、多くの人がドゥームスクローリングの機会を増加させていました。

しかし、対象者の多くは、ネガティブなニュースの閲覧が不安や怒りを増幅させ、日常生活に支障をきたしていることに気づき、徐々にドゥームスクローリングを抑制するようになっていました。

すると、人々は不安やストレスを感じなくなり、他人とのコミュニケーションも円滑になったと報告されています。

では実際に、参加者が採用していたドゥームスクローリングの回避方法について紹介していきます。