ドトールコーヒーを運営するドトール・日レスホールディングスの今期決算は、初の最終赤字に転落する見込みだ。新型コロナウイルスの影響を受け、売上高の落ち込みが業績に深刻な影響を与えている。この危機をどう乗り切るのか。

ドトール・日レスの最新決算と株価変動

ドトール・日レスホールディングスは7月13日、2021年2月期第1四半期(2020年3~5月)の連結業績と通期(2020年3月~2021年2月)の業績見通しを発表した。

第1四半期の連結業績では売上高42.5%減

第1四半期の連結業績は、売上高が前年同期比42.5%減の189億200万円で、営業利益と経常利益、純利益はそれぞれ黒字から赤字に転落した。

具体的には以下のとおり、すべての主要指標で大幅なマイナスに転落している。

  • 営業利益が31億2,300万円のプラスから22億3,400万円のマイナス
  • 経常利益が30億6,700万円のプラスから22億6,500万円のマイナス
  • 純利益が18億7,700万円のプラスから45億500万円のマイナス

通期業績見通しの最終損益は41億円のマイナスに

同時に発表した通期業績見通しは、以下のとおり。

  • 売上高が1,050億2,100万円(前期比19.9%減)
  • 営業利益が1億9,300万円の赤字
  • 営業利益が5,900万円の赤字
  • 最終損益が41億4,700万円の赤字

このとおりになれば、2007年にドトールコーヒーと日本レストランシステムが統合してから初の最終赤字となる。

決算発表後の株価は大幅に下落

この決算発表を受け、ドトール・日レスホールディングスの株価は大幅に下落した。発表翌日の7月14日の終値は前日終値から144円安の1,520円となり、その後も1,600円台を回復しない状況が続いている。

今後の復活策は?「M&Aなどの機会を逃さず」と明言

ドトール・日レスホールディングスは7月13日に発表した決算短信の資料で、「第1四半期においてはドトールコーヒーの多くの店舗が休業や営業時間の短縮を余儀なくされたことで売上が大幅に減少し、店舗家賃や人件費などのコストが収益を圧迫した」と説明している。

今後の外食産業の市場環境については、新型コロナウイルスの終息時期が依然として不透明なことや、消費者の「生活防衛意識」が一層高まる可能性に触れ、「取り巻く環境は、より一層厳しいものになると想定されます」と述べている。

この状況に、ドトール・日レスホールディングスはどう立ち向かっていくのか。その戦略として同社が掲げている内容は以下の2点。

  1. テイクアウトメニューの拡充や店舗商品の拡大
  2. 積極的なM&A(買収・合併)の検討

特に、M&Aには注目したい。

決算資料の中でM&Aに触れている一文は、以下のとおりだ。

「グループ力をさらに高め、ノウハウを共有化することで収益シナジーを創出し、M&Aなどの機会を逃さず積極的に取り組むことで、グループ全体の企業価値拡大を図っていく所存です」

ドトール・日レスホールディングスの過去のM&Aの実施例は、決して多くない。一般的に知られているのは、2009年のベーカリー大手サンメリーの子会社化など2件のみだ。M&Aの積極的な実施によって事業領域を広げ、売上が落ち込むカフェ部門の穴埋めを目指す考えと見られる。

M&Aによって同社が業績を回復すれば、外食企業の生き残りのモデルになるかもしれない。

個人投資家は現在の市場をどう分析すべきか

コーヒーチェーンや喫茶チェーンを含む外食企業大手は、現在はどの企業も厳しい状況下にある。2020年3~5月期においては、ドトール・日レスホールディングスやサイゼリアを含む外食大手7社のすべてが赤字だった。同じコーヒー業界で事業を展開するサンマルクホールディングスや銀座ルノアールは、今期の通期決算の見通しを予測困難として明らかにしていないが、厳しい状況にあることは明らかだ。

日本国内では新型コロナウイルスの抑え込みがうまくいったように見えたが、ここにきて東京や大阪などの大都市圏で「第2波」が起きている。このような状況の中、個人投資家は何に注目し、今のカフェ市場をどう分析するべきだろうか。

2つの視点を挙げるとすれば、「ウィズコロナへの順応力」と「アフターコロナを見据えた仕込み」ではないだろうか。具体的には、前者はデリバリーの実施やM&Aなどによる事業拡大、後者は組織変革などによる収益性の強化などだ。このような取り組みに力を入れている企業は、業績の早期回復が期待できる。

「森」だけではなく「木」も見る視点を

コロナ禍においてもマーケットを広く見渡せば、売上を伸ばしている企業もある。例えばマクドナルドは2020年度の1~3月期、4~6月期の売上がともに前年同期比で5%以上増えており、コロナ禍においても経営陣が舵取りをうまくできていることがわかる。

マクロ的視点で市場分析に努めることも重要だが、各企業の今後の事業計画などに注目すれば、コロナ禍を生き残る企業を見つけやすくなる。「木を見て森を見ず」ということわざがあるが、「森」だけを見るのではなく「木」を見ることも忘れないようにしたい。

外食産業という「森」は厳しい状況にあるが、ドトール・日レスホールディングスという「木」は必死にもがいている。まずは同社がM&A施策などで業績回復を果たせるか、注目したい。

 
執筆・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)

国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。  

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