モノの価格は一定ではなく、さまざまな要因で変動する。特に希少性の高いものや価値の高いものはその変動幅が大きい。今回は、社会情勢の変化により近年高騰を続ける「中古車」「ガソリン価格」「パラジウム」をピックアップし、それぞれの価格高騰の理由に迫る。

中古車価格が暴騰している2つの理由

なぜ中古車価格の高騰が止まらない状況となっているのか。その要因となっている要素は主に「新車生産の落ち込み」と「自動車需要の急上昇」の2点であると言える。

中古車価格高騰の要因①:新車生産の落ち込み

新型コロナウイルスの感染拡大によって、各国でロックダウン(都市封鎖)が起きた。各自動車メーカーの自動車工場が多数ある東南アジアも例外ではなく、ロックダウンによって自動車工場での減産や工場自体の操業停止を余儀なくされるケースが目立った。

それによって新車の生産が落ち込み、新車を購入したくてもすぐに手に入れられない人が出てきたことから、中古車の需要が高まった。需要が高まれば価格は上がる。

さらに半導体不足も追い打ちをかけた。米中の貿易摩擦やパソコン向け半導体の需要拡大などもあり、車載半導体が足りなくなった。このこともネックとなり、各社が生産計画の見直しを迫られた。

中古車価格高騰の要因②:自動車需要の急上昇

新車の生産が追いついていないのに、自動車に対する需要が増えたことも影響している。感染防止のためには、公共交通を使うより自動車で移動した方が効果的だ。人との接触を避けられるからだ。そのため、自動車を新たに購入しようという人がコロナ禍で増えた。

こうした需要はワクチン接種が進むにつれて落ち着いたが、最近ではそれに代わり、レンタカー会社による自動車の購入需要が増えている。観光産業の回復を見込み、取り扱い車両を増やそうとしているからだ。

最近ガソリン価格が高騰している理由は?

日本はガソリンの原料となる原油を輸入に頼っており、価格は石油産出国の情勢に大きく左右される。石油輸出国機構(OEPC)加盟国の動向に加え、世界の経済状況や紛争などの懸念材料を勘案し、石油産出各国は減産や増産を行う。この調整によって、原油価格は大きく変動するのだ。

新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた2020年春頃、石油産出各国は需要の縮小を理由に減産を進め、原油価格は一時大きく下落した。これを反映し、国内のガソリン平均価格は2020年2月の150円台から徐々に下落し、同年5月には120円台まで下げている。

その後数ヵ月は安定したが、同年の秋頃には再び原油価格が上昇に転じた。コロナは変わらず蔓延していたが、世界的に景気が回復基調にあると判断されたためだ。この動きに投機マネーが加わり、原油高を後押ししている可能性もある。

国内のガソリン価格もこれにともなって上昇し始め、2021年2月に140円台、同年3月には150円台を突破している。

その後一度は落ち着いたように見えた原油価格だが、再び価格は高騰し、2022年1月には170円の大台に乗った。さらに、ウクライナ情勢が相場上昇を加速させている。日本政府は抑制策として石油元売り会社へ補助金を支給しているが、価格は高止まりしており、下がる気配はまだない。

消費国側は大幅増産を要求しているが、同年3月に行われた「OPECプラス」の閣僚級会合では追加増産を見送る判断が下されている。

ウクライナ侵攻でパラジウムの価格が高騰

ロシアのウクライナ侵攻が我々の生活に与える影響のひとつが、パラジウムの価格高騰である。パラジウムは希少な金属だが、車の排ガスを抑えるための部品やコンデンサーなど電子部品の材料、銀歯の材料や宝飾品として使われている。

2022年の初め、パラジウムの価格は1トロイオンス=およそ1,800ドル台だった。しかし、ロシアのウクライナ進行の影響で、3月初旬には1トロイオンス=2,600ドル台まで上がっている。 これは、今年のはじめの価格の1.4倍から1.5倍の価格である。

歯科治療に影響を与えるなど、パラジウムの価格高騰は、さまざまな方面に影響を出している

アフターコロナの動きにも注目

ここ数年、新型コロナウィルス感染拡大はあらゆる業界に大きな影響を与えた。壊滅的な状況になったところもあれば、中古車のように、コロナ禍が追い風になった業界も少なくない。アフターコロナの時代にこれらの業界がどのように変化していくかにも注目していきたい。

文・MONEY TIMES編集部