背痛(はいつう)は、ほとんどの人が一生に一度は経験すると言われるほど、一般的な痛みです。
とくに、成人になってから発症しやすくなり、背痛を持つ人の4人に1人は、痛みが慢性化し、仕事や日常生活に支障をきたしています。
そんな中、世間では「背痛を予防・緩和するには”よい姿勢”を守ることが大切である」と声高に主張されています。
ここで「よい姿勢」とは、座ったり、立ったり、物を持ち上げるときに、背中を丸めず背筋をまっすぐ伸ばした体勢と定義されます。
しかし意外なことに、「背痛」と「よい姿勢」の間に密接な関係があることを示す証拠は存在しないのです。
豪カーティン大学(Curtin University )の研究チームは、これまでの調査をまとめて、「よい姿勢を守ることは、背痛の予防や治療に寄与しない」と指摘します。
では、誰もがなりうる背痛は、どう予防し、いかに対処すればよいのでしょうか?
「よい姿勢」は、背痛の予防にならない?
カーティン大の研究チームは、これまで、背骨の姿勢と背痛の関連性を探る研究をいくつか行ってきました。
その一つとして、青少年の大規模集団を対象とした調査を例にあげています。
それによると、頻繁に背中を丸めたり、猫背であっても、将来の背痛リスクを増大させることには繋がりませんでした。
背痛を患う成人と背痛のない成人を比較しても、日常における姿勢に一貫した違いは見られていません。
![「よい姿勢」で背痛は予防できない?](https://nazology.net/wp-content/uploads/2022/08/85473a7eb75a61e82f363b4e6126321c.jpg)
これは、重い荷物を持ち上げるリフト姿勢に関しても同じでした。
興味深いのは、5年以上肉体労働に従事している人を調べたところ、背痛のない人は、より前かがみで背中を丸めたリフト姿勢を取る傾向にありました。
反対に、背痛を患っている人ほど、背筋をまっすぐに維持する、いわゆる「よい姿勢」を取っていたのです(PLoS One, 2021)。
背痛持ちの人ほど、「よい姿勢」のアドバイスをよく受け入れていましたが、皮肉なことに、「よい姿勢」を守らない人の方が、背痛リスクは低くなっていました。
また、別の小さな研究では、背痛の症状が緩和するほど、人々は「よい姿勢」を気にしなくなることがわかっています。
これらの結果からは、背痛と姿勢の良し悪しはあまり関連していないことがわかります。
しかし、姿勢の良し悪しが関係しないというなら、背痛はどう予防し、いかに対処すればよいのでしょうか?