現代社会の新しい不安-情報漏洩リスク
持ち物の確認や火の元の確認は割と古典的な症状ですが、情報化社会の今日では「個人情報漏洩」のリスクを繰り返し確認するという症状も出てきています。
例えば、ごみ箱の紙くずを繰り返し確認する症状です。何かの明細やATMの現金出し入れの控えなど、私たちの個人情報はいろいろな「紙」に書かれてやり取りされています。ただ、その多くはすぐに紙くずになってゴミ箱行きになります。ゴミ箱をあさってでも、個人情報を得ようとする不届き者が本当にいるかどうかわかりません。
ただ、そのままで出してしまうと不届き者が「見ようと思えば見られる」というリスクを犯すことになります。そこで漏洩を心配する人は、マジックで上書きして読めなくするなど何らかの対策をしてからゴミ箱に捨てます。
個人情報は守りたいものですが…
しかし、強迫性障害では「もしかしたら、上書きしていない紙くずが混ざっているかも…」と心配になってしまうのです。そこで、ゴミ箱をひっくり返して、個人情報が読めてしまう紙くずがないか徹底的に確認します。
このタイプの方には、「ネット上に自分の個人情報が漏れていないか」「会社の機密を漏らしていないか」ととても心配する方もいます。漏れていないと安心できるまで、他の仕事を中断して確認をしてしまうこともあります。確認そのものは良いことなのですが、まさに過ぎたるは及ばざるが如しなので、心配優先の心配払拭第一主義で無駄な確認を繰り返さないように心がけたいですね。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は縁起強迫をご紹介します。
文・杉山 崇
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杉山 崇(脳心理科学者・神奈川大学教授)
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文・杉山 崇/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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