目次
遺産分割協議のケース別対処法
遺産分割協議がまとまらない場合は?

遺産分割協議のケース別対処法

遺産分割協議の手順と注意点。協議がまとまらないときの解決法も解説
(画像=『RENOSYマガジン』より引用)

遺産分割協議は相続人が一人でも欠けると、その内容は無効となってしまいます。「相続人が海外に住んでいる」「居場所がわからない」などという事情により前に進まない場合、どのように対処したらよいのでしょうか?

海外在住の相続人がいる場合

遺産分割協議は、日本国内に住んでいる相続人だけが行うものではありません。帰国が難しい場合は、電話やテレビ電話、メールなどで話し合いを進めます。

遺産分割協議書の作成に際し、海外在住の相続人にも印鑑証明書を添付してもらうのが本来ですが、海外では印鑑や印鑑証明書は一般的ではありません。そのため、海外在住の相続人には、印鑑証明書の代わりに「サイン証明書(原本)」を提出してもらいます。

不動産の相続登記においては「相続人全員の住民票」が必要です。海外にいる相続人には、住民票の代わりとなる「在留証明書(原本)」を準備するように伝えましょう。

相続人に帰化した人がいる場合は、戸籍の代わりに「相続を証する書面」として、「出生証明書」や「婚姻証明書」「死亡証明書」などが必要です。

国際郵便でのやりとりには時間がかかります。不備が生じないように、細心の注意を払いながら進めていくことが大切です。

相続人の住所・連絡先がわからない場合

相続人の中に住所や連絡先が不明の人がいる場合は、その人の本籍地にある役所で「戸籍の附票」を取得しましょう。戸籍の附票とは、戸籍が作られてから現在に至るまでの住所の異動が記録されているものです。

遠い親戚で所在がまったくわからなくても、故人の戸籍謄本から本籍地を確認して戸籍の附票を取得すれば、現住所が判明するケースもあります。

ただし現住所が判明しても、本人が必ずそこに住んでいるとは限りません。所在不明の場合は、「不在者(従来の住所を去り、容易に戻る見込みのない人)」とみなされます。

この場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人の選任」を申し立てたうえで、遺産分割協議を進める流れです。

参考:不在者財産管理人選任 | 裁判所

遺産分割協議がまとまらない場合は?

遺産分割協議の手順と注意点。協議がまとまらないときの解決法も解説
(画像=『RENOSYマガジン』より引用)

相続関係が複雑なケースでは話し合いが難航し、あっという間に時間が過ぎてしまいます。一向に合意に至らない場合は、「遺産分割調停」や「遺産分割審判」により分割を決定することになります。

裁判所に遺産分割調停を申し立てる

話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てます。「調停」とは、勝ち負けを決めるのではなく、あくまでも話し合いによって解決する方法です。

第三者である調停委員が各相続人の言い分を聞いたり、相続財産の鑑定を行ったりして、全員が納得できるような解決策を提案します。調停が成立するには、相続人全員の合意が必要です。誰か一人でも反対者がいれば、調停が不成立となる点に注意しましょう。

参考:遺産分割調停 | 裁判所

調停が不成立なら遺産分割審判へ

調停が不成立の場合、「遺産分割審判」の手続きに自動的に移行します。利害関係者が特別に申し立てる必要はありません。

審判とは、審判官が法律や判例に基づいて遺産の分け方を決めることです。遺産分割調停では相続人が別々の部屋に分かれて話をするのに対し、遺産分割審判ではすべての相続人が同じ部屋で手続きを進めます。

調停と異なり、当事者は審判で出された結果に従うのが原則です。審判の結果に納得がいかない場合は、審判の告知から2週間以内に「即時抗告」を提訴する流れとなります。