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50年後もレースを続けるためのカーボンニュートラル
HondaとTOYOTAのシナジーが、モータースポーツの明日を作る
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50年後もレースを続けるためのカーボンニュートラル

エンタメ性の強化と、レースの脱炭素化。これらを実現することで、スーパーフォーミュラを日本で、そして世界からも注目される存在にしていく。その目標に向けて、具体的にはどんな取り組みをしているのだろうか。

HondaとTOYOTAが異例のタッグ  ライバルと挑むカーボンニュートラル【前編】
(画像=『Moto Megane』より引用)

柳澤さん:“速いヤツが勝つ”という分かりやすいフォーマットを際立たせていくことが、エンタメ強化の肝。ワンメイクレース(レースに使用するエンジン、タイヤ、シャシーなどを同条件とすること。ドライバーの腕が勝敗に大きく影響する)というスーパーフォーミュラの特性を生かし、世界中のレーシングドライバーが参戦したくなる、そして世界中の子どもたちに憧れられるドライバーを生み出す、“ドライバーズファースト”のレースを作っていきます。

横野さん:そこで現在取り組んでいるのが、「SFgo(エスエフゴー)」という新しいデジタルプラットフォームです。レース中継映像に加えて、全ドライバーのオンボード(車載)映像やアクセル開度などのテレメトリーデータ、将来的には無線のやり取りなどをスマートフォンからライブで見られる仕組みが目玉で、2023年のローンチに向けて開発を進めています。
スーパーフォーミュラの魅力は、マシンがどんなに高性能でも、最後は人間の力で差がつくというところが一番。その面白さをいかに伝えていくか、ドライバーとレースを見る人をどうつないでいくかといったところが課題です。

HondaとTOYOTAが異例のタッグ  ライバルと挑むカーボンニュートラル【前編】
(画像=『Moto Megane』より引用)

柳澤さん:一方、そういったレースを未来につないでいくためにも必要なのが脱炭素化です。カーボンニュートラルは、どんな業界でも取り組んでいかなければならない社会的な責任。SF NEXT50では、従来のレース車両に使われている素材の一部を見直し、カーボンニュートラルを実現していくことを目指しています。 現在テスト開発を進めているのは、サステナブル素材を採用したレーシングタイヤ、バイオコンポジット素材を活用したカウル(外装)、そして、カーボンニュートラル燃料です。特に燃料は大きなテーマで、これを実用化できれば、これまで通りエンジンで走るレース車両を使いながら、二酸化炭素(以下、CO2)の排出を抑えたレースをすることが可能になります。

HondaとTOYOTAが異例のタッグ  ライバルと挑むカーボンニュートラル【前編】
(画像=開発中のタイヤは、自然由来の配合剤と廃タイヤから再生したゴムを活用、『Moto Megane』より引用)
HondaとTOYOTAが異例のタッグ  ライバルと挑むカーボンニュートラル【前編】
(画像=カウルは麻などの天然素材から作られている、『Moto Megane』より引用)

横野さん:サーキットにこだまするエンジン音の迫力は、何物にも代えがたいものがあります。そういう意味でもエンジンはレースに欠かせない存在ですが、使い続けたいだけではエゴになってしまう。だからこそ、世界がEV(電気自動車)にシフトしていく中、レースにおいてはエンジンという内燃機関もまだまだ価値のあるものであると示していかなかればなりません。日本が世界に誇る技術的な優位性を維持するためにも、カーボンニュートラル燃料は重要な要素なんです。

HondaとTOYOTAが異例のタッグ  ライバルと挑むカーボンニュートラル【前編】
(画像=カーボンニュートラル燃料はさまざまな配合を試しながら、ベストなものを探っている、『Moto Megane』より引用)

横野さん:現在のガソリンを使ったレースであっても、実際にレース車両から排出されるCO2の割合は、実はそこまで多くありません。それがゼロになったとしても、環境への貢献度としては低いでしょう。しかし、社会に訴えるインパクトは大きいはずです。なにより培った技術を量産車にも生かすことができれば、結果として相当量の​​CO2削減につながっていくわけです。
そう考えると、現在開発している2台のテスト車両から始まったことが、将来、何百倍、何千倍にもなって返ってくる可能性を秘めている。それを国内最高峰のモータースポーツであるスーパーフォーミュラが主導していくことに意味があるんです。

HondaとTOYOTAが異例のタッグ  ライバルと挑むカーボンニュートラル【前編】
(画像=左がTOYOTAエンジンを積んだ「赤寅」、右がHondaエンジンを積んだ「白寅」。
2022年が寅年であることからトラ柄にデザインされている、『Moto Megane』より引用)

柳澤さん:極端に言ってしまえば、CO2を出すのであれば、レース自体をやめた方がいいってことになってしまうわけです。しかし、モータースポーツというエンタメを楽しんでくれている人は沢山いて、その人たちのためにもこのレースを残していきたい。 その中で我々にどういう努力ができるのかが今、試されている。エンタメの強化も脱炭素化も、スーパーフォーミュラを再び盛り上げるためには必ず達成しなければなりません。Honda、TOYOTAに文化の違いがあろうとも、ここの認識は完全に同じ。絶対にブレません。

HondaとTOYOTAのシナジーが、モータースポーツの明日を作る

次の50年に向けて動き出したSF NEXT50だが、まだスタートからたった半年。今後さまざまな施策が計画されているものの、圧倒的に周知が足りていないというのが実状だ。取り組まねばならない課題は多いが、それでも力強く前に進めるのは、協働によって生まれるシナジーがあればこそ。

HondaとTOYOTAが異例のタッグ  ライバルと挑むカーボンニュートラル【前編】
(画像=Honda、TOYOTA、JRP、ドライバーがそろったSF NEXT50プロジェクト発足の記者発表会、『Moto Megane』より引用)

横野さん:実際にまだまだ認知度は低く、本当にこれからのところです。でも、協働によって得られるメリットはものすごく大きいものがあります。特に、新しいことを圧倒的なスピード感で進められること。これまではJRPからエンジンサプライヤーであるHondaとTOYOTAにそれぞれ相談・提案し、そこから2社の意見を調整してと、1つのことを決めるのに平気で1~2週間はかかっていました。
しかし、Hondaから私が、TOYOTAから柳澤がJRPに出向している現在の体制では、ある程度のことなら、わずか5分で済むこともある。冒頭でお話ししたように、モータースポーツに対する強烈な危機感をお互いに共有しているからこそ、このスピード感が生まれています。

HondaとTOYOTAが異例のタッグ  ライバルと挑むカーボンニュートラル【前編】
(画像=一緒に働き始めて約半年だが、良いチームとして機能している、『Moto Megane』より引用)

柳澤さん:お互いに信頼し合っているからこそできていることだと思うんです。本来私たちは、レースや技術開発では争っているライバル同士。それがSF NEXT50の現場では、HondaのピットにTOYOTAのエンジニアが出入りする場面も見られています。そんなこと、今までは絶対にあり得ませんでした。
だからこそ、SF NEXT50においては、「ここからはHondaの領域、こちらはTOYOTAの領域」というふうに分けて考えることは、基本的にダメだと思っているんです。50年後もレースを楽しむために、カーボンニュートラルという目標のために、ゼロが初めて1になった。今後はこれに他のメーカーさんを巻き込んだり、業界の外の力を借りたりして、10にも100にもしていくのが私たちの使命です。

横野さん:私も本当にそう思います。まさにその想いが表れているのが、“赤寅”と白寅”のフロントウイングのデザインですよね。よく見ると、HRC(ホンダ・レーシング)※とTGR(TOYOTA GAZOO Racing)※のロゴが左右に並んでいるのが分かると思います。本来は、このメーカーのエンジンが載っていますという証しとして付けるもの。そこに2社のロゴが並ぶ重さは計り知れません。いちモータースポーツファンとしても、このロゴを見るたびに気持ちが引き締まります!

※HondaとTOYOTAのレース部門

HondaとTOYOTAが異例のタッグ  ライバルと挑むカーボンニュートラル【前編】
(画像=SF NEXT50のロゴを挟んで2社のロゴがフロントウイングに並ぶ、『Moto Megane』より引用)

柳澤さん:SF NEXT50は、次の50年に向けたカーボンニュートラルの取り組みだけに終わりません。モータースポーツを、国内最高峰のスーパーフォーミュラを、さらに面白く発展させていきます。将来、過去を振り返ったとき、今がそのターニングポイントだったよね、と思えるようなものにしていきたい。

横野さん:こうしている間にも、世界中ではいろいろな可能性が模索されていて、メーカーの立場によってもさまざまな思惑が渦巻いています。私たちも後れを取らないよう、トライ&エラーを積み重ね、迷いながらも一歩一歩進んでいきます。

HondaとTOYOTAが異例のタッグ  ライバルと挑むカーボンニュートラル【前編】
(画像=次の50年に向けて、2人の活躍に期待したい、『Moto Megane』より引用)

リリース提供元:本田技研工業株式会社

※記事内容は全て執筆時点のものです。最新の情報をお確かめください。

提供元・Moto Megane

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