Hondaの”これから”がわかるメディア「Honda Stories」で、国内最高峰のレースの一つ「SUPER FORMULA」でスタートしたプロジェクト「SUPER FORMULA NEXT50」の対談が公開された。メンバーは日本レースプロモーション(JRP) マーケティング部 デジタル担当の横野翔太氏と、JRP)マーケティング部長の柳澤俊介氏で行われた。

目次
ライバルと挑むカーボンニュートラル ~HondaとTOYOTAに手を組ませた「強烈な危機感」とは~
レース消滅の危機感から始まった「SF NEXT50」

ライバルと挑むカーボンニュートラル ~HondaとTOYOTAに手を組ませた「強烈な危機感」とは~

HondaとTOYOTAのメディアコラボが実現! 国内最高峰のレースの一つ「SUPER FORMULA」でスタートしたプロジェクト「SUPER FORMULA NEXT50(ネクスト ゴー。以下、SF NEXT50)」。その取り組みを「HondaStories」と「トヨタイムズ」が同時取材し、別の視点で紹介する。HondaStoriesでは、前編でカーボンニュートラルに向けた取り組みを、後編で関係者インタビューをお届け。トヨタイムズでは豊田章男社長の一言に端を発した改革のスタートと現在地を伝える。

前編となる今回は、SF NEXT50の最前線で奮闘する2人のキーパーソンに、HondaとTOYOTAというライバル同士が、このプロジェクトで強力に共同した背景を語り合ってもらった。

HondaとTOYOTAが異例のタッグ  ライバルと挑むカーボンニュートラル【前編】
(画像=『Moto Megane』より引用)

横野翔太

日本レースプロモーション(JRP) マーケティング部 デジタル担当。2012年Honda入社。汎用パワープロダクツ事業本部 海外業務室、四輪事業本部 商品企画部、モータースポーツ部など(各部門名称は所属当時)を経て、2022年4月JRP出向。新デジタルプラットフォーム「SFgo(エスエフゴー)」開発プロジェクトリーダーとして、モータースポーツの面白さを、いかに伝えられるか悩み続ける日々。

HondaとTOYOTAが異例のタッグ  ライバルと挑むカーボンニュートラル【前編】
(画像=『Moto Megane』より引用)

柳澤俊介

日本レースプロモーション(JRP) マーケティング部長。2004年トヨタ自動車入社。国内営業部門を経て、トヨタのスポーツカーブランド「GR」を展開するGRカンパニーに異動。GRブランド商品やモータースポーツのマーケティング企画に従事し、2022年1月JRP出向。スーパーフォーミュラの価値向上に向けて、マーケティングや営業活動に奔走する。

レース消滅の危機感から始まった「SF NEXT50」

国内トップフォーミュラの歴史が創設50年という節目を迎える2022年。SUPER FORMULA(以下、スーパーフォーミュラ)にエンジンを供給するHondaとTOYOTAが、レースを運営する日本レースプロモーション(以下、JRP)と共に立ち上げ、スタートさせたプロジェクトが「SF NEXT50」だ。

横野翔太さんはHondaから、柳澤俊介さんはTOYOTAから、それぞれJRPに出向し、メーカーの垣根を越えて社員として同プロジェクトをけん引している。自動車業界において、ライバルメーカー同士が手を組むという前例のないこの取り組みは、何がきっかけで始まったのか。

HondaとTOYOTAが異例のタッグ  ライバルと挑むカーボンニュートラル【前編】
(画像=フォーミュラカーは、車輪とドライバーが剥き出しとなっている競技車両のことで、
その国内トップカテゴリーがスーパーフォーミュラ、『Moto Megane』より引用)

柳澤さん:スーパーフォーミュラは、日本最高峰のフォーミュラカーレースです。ドライバーたちが純粋に速さを競う場であり、スーパーフォーミュラで優勝したドライバーこそが日本で一番速いドライバーであると言えますし、その先にF1という世界の舞台も見えてくる。参戦しているドライバーたちには、価値の高さを認めてもらっています。
しかし、そうした特別なレースであるという魅力がお客さまには伝わっておらず、来場者は右肩下がりなのがリアルなところ。コロナ禍でさらに観客が減ったことで、このままではレースが消滅してしまうかもしれない、という未来が、いよいよ冗談ではなくなってきました。どうにかしなければいけないという強烈な危機感が、SF NEXT50の出発点です。

HondaとTOYOTAが異例のタッグ  ライバルと挑むカーボンニュートラル【前編】
(画像=『Moto Megane』より引用)

横野さん:SF NEXT50で目指しているのは、スーパーフォーミュラの「エンタメ性」を “レーシングドライバーを主役にして”、デジタル技術で強化すること。そして「カーボンニュートラル」を実現していくこと。そのために私たちはJRPに出向しているわけですが、前提となるこの課題感をお互いに100%共有できているので、意外とライバルメーカー同士ならではのやりにくさとかはなく、むしろ目標に向かってしっかりと協力体制を築けています。

柳澤さん:そうだよね。このままでは本当にレースがなくなってしまうかもしれないとお互いが本気で思ってる。そうでもなければ、意見が食い違ってケンカになる部分がきっと出てきます(笑)。やっぱりお互いに社風が染みついているところがあって、最初に横野と会ったとき、彼はモータースポーツが大好きっていうキャラクターとして現れたので、私の中ではすごく“Hondaらしい人”だなと思ったんですけど——。

横野さん:私も柳澤さんは“TOYOTAらしい人”だなと思っていました(笑)。理路整然と物事を並べて、最短距離で目的を達成するっていうところとか。

HondaとTOYOTAが異例のタッグ  ライバルと挑むカーボンニュートラル【前編】
(画像=『Moto Megane』より引用)

柳澤さん:今は私が上司で横野が部下という関係ですが、私はマーケティング、彼はファン心理を深く理解したコンテンツ作りとお互いに得意分野が違っていて、リスペクトし合えるというのも良かったのかもしれないですね。

横野さん:SF NEXT50に携わるに当たっては、それぞれに個人的な想いもあります。私は、子どもの頃、2003年に初めて鈴鹿サーキットで第3期 Honda F1のレースを観戦して以来、ずっとモータースポーツのファンなので、今のスーパーフォーミュラのまだまだ観客が入れるスタンドを見るとやはり寂しいし、強い危機感を覚えています。だから、少し大げさですがファン代表のつもりで、ファンならではの目線をSF NEXT50に生かしたい。それがこのプロジェクトでの個人的な想いです。

柳澤さん:私は逆にモータースポーツに関わるようになったのはGRカンパニーに異動してから。マーケティングの仕事をしていく中で、スーパーフォーミュラやSUPER GTといったレースを担当することになりました。その中で、たくさんのドライバーと話す機会があり、彼らが本当に楽しがってレースをやっていることに感銘を受けました。
しかし、その楽しさがお客さんに伝わっていないのであれば、それは100%マーケティングに問題があるということ。SF NEXT50では、モータースポーツの魅力をしっかり伝えることをやっていきたいと思い、自分で手を挙げたんです。