オフロードにおいては普通ではない性能を発揮
ジープの祖は、第二次世界大戦初期に悪路を素早く移動するために開発された小型軍用車です。あまりに優れたマルチパーパス性能を備えているので、その後多くの民生版が登場しました。JLはオーセンティックなジープの血統の車であり、いくら普通になったと言っても、高い悪路走破性はアイデンティティです。
一見、特異なスタイリングは、すべて悪路走破性に寄与するということを知らない人も少なくありません。限りなく真四角なのは、ドライバーがオフロードにおいて車体の四隅の位置を把握しやすくしたもので、同時に不要な障害物との接触を防いでくれます。ボンネットが平行方向に真っ直ぐなため、車体が斜面で傾くと、どのくらいの傾斜にいるかが直感的に把握できます。
大径のタイヤと余裕のあるタイヤハウス内のクリアランスは、大きな岩や段差を越える時でもしっかりとタイヤがトラクションを生み、地形に合わせて車輪が自在に動くためにあります。
クロスカントリー4WDは長年、オンロードでシャープかつ快適に走るという性能と、悪路を自在に走るという2つの性能の両立に苦労してきましたが、このジープ ラングラーアンリミテッドJLはその理想を真の意味でかなえた車だと言えます。
JLには通常モデルのスポーツと、豪華バージョンのサハラ、そして特別なオフロード装備を持つルビコンの3つのラインがあります。今回は2Lのスポーツと、3.6Lのルビコンに試乗しましたが、オフロード性能の高さは両タイプとも申し分ありません。
特に、ルビコンはBFグッドリッチのMT(マッドテレーン)タイヤが標準。さらには4WD-Lレンジのギア比がスポーツよりも低く、より大きな駆動力を発揮するようになっています。オンロードでのシャープなハンドリングをサポートするスタビライザーですが、脚をよく動かしたいオフロードでは邪魔なため、スイッチで解除が可能です。さらに、前後のディファレンシャルロックが装備されているため、対角スタック状態に陥った時でも差動を無くし、容易に脱出することが可能です。オフロード走行でヒットしやすくなるサイドステップは取り外され、代わりに岩へのヒットからボディを守るロックバーが装着されています。
これだけの装備が付いていれば、あと必要なのは悪路走行の知識だけ。誰でもイージーにクロスカントリードライブが可能です。今回のように十分に整備されたオフロードコースを走っても、あまりにも簡単に走ってしまうため、まるで手応えがないくらいです。ちなみに標準仕様のスポーツでも同じことで、脚の動きの違いやデフロックの未装着ということを十分に理解していれば、ルビコンに劣らぬオフロード性能を見せてくれます。
つまり、ジープ ラングラーアンリミテッドJLは、世に存在するすべての車の中においても、類まれなるダイバーシティーな車なのです。SUVが隆盛を誇っている昨今、似たような形の車はたくさんありますが、本当の意味での多用性を持ったモデルは意外と多くありません。
「日本では走れるオフロードがない」とよく言われますが、4WDを使うシーンは日常的にあるものです。雪、大雨、強風、海水浴場の駐車場、多人数&荷物満載での坂道、などなど。なぜか切り替えレバーが付いていると、その使用を特別なことのように考える人がいますが、そうではありません。さらに自然災害の危惧が高まっている昨今の日本では、こうした悪路走破性は危険地域から脱出するための「保険」にもなります。
価格はJKより50万円ほどアップしたものの、性能と装備のことを考えれば決して不当なプライスではありません。ほぼ同等の性能のGクラスを考えればお値打ち価格なのではないでしょうか。何よりもジープという分かりやすいアイコンは、アウトドアライフやスポーツライフを志向する人には、生活やファッションを彩るギアとしてうってつけです。
近所への買い物や子どもの送り迎えに使えて、キャンプやスノボにも楽々行ける。そして、いざ自然災害が発生すれば、頼りになる潜在能力を持ち合わせている車なんてそうそうありません。
冒頭で書いたように、日本人のジープに対するイメージはネガティブであることが多いのですが、実像はまったく違います。FCAジャパン系列の販売店のケアも細やかで、輸入車だということを意識しないで乗れるだけの、クオリティを実感できました。
もちろん、3.6Lともなれば自動車税は高額ですし、運転方法やエンジンオイルのグレードなどに気を遣わなければ、燃費は良くても7km/ℓ程度です(2.0L車はそんなことはありません)。駐車場では、隣に車がいた場合は乗り降りが大変です。それでもジープ ラングラーアンリミテッドJLは、ずっと憧れのままで来た人、また悪いイメージを持っている人に、ぜひ“一線を越えて”いただきたい夢のあるSUVなのです。
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文・山崎友貴/提供元・CarMe
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