「浅瀬で産卵する」とは限らない?
今回の研究では、2018年から2019年の2年間、9月から12月にかけて、高津川の河口から約10㎞の範囲で、日没前と日没後に定期的な調査を行いました。環境DNA分析によるモニタリングを行い、アユが産卵を行う夜間の環境DNA量を日中と比較したのです。
その結果、アユの産卵場所として知られている3つの浅瀬で夜間の環境DNA量が増加している事がわかったのですが、それだけでなく「水深のある平瀬」や「流れのあるトロ場(流心近くで深くなっている場所)」においても、夜間の環境DNA量が増加している場所があったことが観測されたといいます。
実はこれまでアユの産卵場は、一般的には「水深の浅い瀬」であると考えられてきました。そのため、全国各地の河川で「アユの産卵場を造成する」という名目で浅瀬を造成するような工事が行われてきました。
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しかし今回の調査は、今まで産卵場として重要視されていなかったような場所もまた、重要な産卵場となっていることを示唆しています。 上記のような浅瀬造成工事は、経済種であるアユを増やすことが歓迎される一方で「他の生物が暮らす環境はどうでもいいのか、アユのために犠牲になる生き物たちのことは考えないのか」という不満の声も根強くあります。それでもアユを増やすためにはと行われてきたのですが、今回の研究がこのような考え方に一石を投じる結果となるかもしれません。
参考:環境DNA分析によってアユの産卵実態の詳細が明らかに(PR TIMES 2021.6.1)
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
提供元・TSURINEWS
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