経済的に重要な淡水魚のひとつアユ。彼らは「浅瀬で産卵する」といわれていますが、意外とそうではないのかもしれない、という研究結果が発表されました。

高津川とアユ

島根県の西部を流れる高津川。一級河川でありながら流域にダムがなく、清流として知られています。

この高津川は古くから良質なアユが多産する川として知られ、かつては大名への献上品としても用いられてきた歴史があります。流域では現在も、焼干しにしたアユでダシをとった雑煮が親しまれています。

環境DNA分析で進むアユの研究 「浅場で産卵」だけではない可能性
高津川流域の風景(提供:PhotoAC)(画像=『TSURINEWS』より 引用)

もちろんアユ釣りも盛んで、コロナ禍以前はこの川の美味しいアユを求め、他地域からも釣り人が訪れたそうです。高津川のアユは水産資源としても観光資源としても欠かせない存在だといえるでしょう。  

環境DNAを分析

この高津川にて、福岡工業大学と山口大学の研究チームが「環境DNA分析分析」という手法でアユの生息・産卵の実態を調査しました。これは川の水に含まれる魚などの生物のフンや、皮膚、分泌物などのDNAを読みとくというもので、その場所にどんな種の生物がいるのか特定することが可能となる画期的な調査方法です。

環境DNA分析で進むアユの研究 「浅場で産卵」だけではない可能性
アユ(提供:PhotoAC)(画像=『TSURINEWS』より 引用)

アユの産卵期には、精子等の生殖細胞や産卵行動に伴う親魚由来の体細胞由来のDNAが、産卵場所付近の水域で一時的に増加すると見られています。そのためそれらのDNAデータから、付近のアユの産卵行動について分析することが可能になるのです。

高津川のアユは年々減少していることが指摘されており、それを止めるための有効な対策を見つけることが喫緊の課題となっています。産卵行動を調査するのもその解決策の一つになると目されています。