個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」の掛け金の支払い方法が柔軟になったのをご存知だろうか。2018年1月1日に改正法が施行され、これまで毎月払いしかできなかったのが、「半年払い」や「年払い」もできるようになった。改正の内容は一体どのようなものなのかを見ていこう。
iDeCoとは?
まずは簡単にiDeCo(イデコ)の概要から。iDeCoは将来に備えて自分自身で年金を準備するという公的年金制度の1つである。元々は、企業年金制度がない人の老後をバックアップする目的で作られた制度であるが、冒頭で述べたとおり、2017年1月の改正で、公務員や専業主婦(夫)も含めほぼ全ての人が加入できるようになった。その結果、「国民年金」や「厚生年金」を補完するための第二の公的年金ともいえる制度となっている。
iDeCoの特徴は、掛金が全額所得控除の対象で、運用益も非課税であること、さらに受け取るときも「公的年金等控除」や「退職所得控除」の対象になるため税制上非常に有利になっていることだ。 2018年1月からはじまる「つみたてNISA」との違いについて気になる人も多いと思うが、「つみたてNISA」は運用益が非課税になるだけで、所得控除や受け取り時の税制優遇はない。「つみたてNISA」の目的はあくまで投資の促進であって、老後の準備のために税制優遇しているわけではないからだ。
したがって、老後の準備をしたいという場合、第一の選択肢としては、「iDeCo」の方になる。その上で、さらに投資でお金を増やしたいという場合には「つみたてNISA」の活用が考えられる。
2018年度の改正内容
2018年の改正内容は、「掛金の拠出時期の年単位化」と「拠出限度額の年単位化」である。これまでは、拠出時期として毎月掛金を拠出しなければならなかったが、これが2018年1月以降は、年1回以上掛金を拠出すればよくなる。
つまり、「月払い」だけでなく、「半年払い」や「年払い」も可能になったのだ。また、これまでは、拠出限度額に満たない額を掛金として設定した場合、各月で使い残しが発生していたが、2018年1月以降は、各月の使い残し分があっても年度内ならばその分を使うことができるようになった。
たとえば、これまで利用限度額が月2万3000円だった人は、年間2万3000×12か月=27万6000円の範囲で掛金をかけることができる。毎月1万円を掛金として設定していた人は、限度額との差額1万3000円をこれまでは使い残していたわけだが、2018年1月以降は、毎月1万円の掛金を支払って夏と冬のボーナス時期にそれぞれ7万8000円の掛金を追加して支払うといったことが可能になる。そうすると「1万円×12か月+7万8000円×2回=27万6000円」というように限度額を全て使い尽くすことができるのだ。
ボーナス払い以外にも、年に1回27万6000円を支払うということでも構わない。ただ、掛金の拠出については、12月分の掛金(1月納付)から翌年の11月分(12月納付)を単位とし、経過済期間に限り掛金を拠出することができるので、年の初めの1月に全額一括で支払うということはできない。
なお、基本は月単位なので、掛金を年単位で拠出するには、事前に拠出の年間計画(加入者月別掛金額登録・変更届)を提出する必要がある。年間計画では、必ず11月分(12月納付)を含めなければならないことになっているので注意が必要だ。この届出をしないと「月単位」のままとなる。
年単位によるメリット
年単位にすることで、非課税枠を有効につかえるようになり、ボーナスなども活用してより多くの拠出が可能になる。また、支払い回数を少なくした場合、事務手数料が少なくて済む。毎月拠出だと103円×12か月=1236円だが、年1回の支払いなら103円だけで済むのだ。大した額ではないように思えるかもしれないが、預金などで長期間運用する予定の場合、金利はわずかで手数料が結構かさむので赤字になりかねないので、検討する価値はあるだろう。
年単位によるデメリット
年単位になることで生じるデメリットとしては、変動幅の大きい金融商品で運用する場合、ドルコスト平均法が使えないということがある。ドルコスト平均法は、毎月一定額で買い続けることで、相場の値段が安いときには多く、相場の値段が高いときには少なく購入できることから購入価格を平準化することができ、数量ベースで購入するよりも平均取得価格が安くなるという手法である。
たとえば、年末に1年分の掛金を支払おうと思っていたら、その時相場の値段が非常に高いということもあるので、年一括払いでは特に注意が必要だ。また、貯蓄の基本は、お金に余裕があったら行うということではなく、毎月決まった額を積み立てることなので、積立ての意識が薄れお金を使ってしまうリスクがある。
このように、確定拠出年金の掛金が「月単位」から「年単位」になることで得られるメリットとデメリットがある。貯蓄が苦手という人は、これまで通り「月単位」で計画的に積み立てた方が良いだろうし、貯蓄好きという人は自由度が高く拠出限度枠を使い切ることができる「年単位」を選ぶと良いのではないだろうか。
文・ZUU online編集部
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