遺伝子をスマホで読み取れる時代がきました。

12月7日に『GigaScience』に掲載された論文によれば、携帯電話サイズのDNA読み取り機とiPhoneを利用して、遺伝子の塩基配列の解読に成功したとのこと。

昨今、たくさんのスマホアプリが開発されていますが、塩基配列の分析ができるのは今回開発されたアプリ「iGenomics」がはじめてになります。

このアプリによって誰でも気軽に自分の遺伝情報を調べられる時代が来るかもしれません。

しかし、手のひらサイズの機械がいったいどうやって塩基配列を読み取ったのでしょうか?

目次
ついに手のひらサイズになった遺伝子読み取り機の仕組み
超大型演算器の代替品は「スマホのアプリ」

ついに手のひらサイズになった遺伝子読み取り機の仕組み

スマホで簡単に「遺伝子を解析できるアプリ」が開発される! 遺伝子解析はどこでもできる時代へ
(画像=『ナゾロジー』より引用)

DNAの解読技術はゲノムプロジェクトの開始された当時に比べ、驚異的な進歩を遂げました。

初期においては業務用冷蔵庫ほどのサイズだった遺伝子読み取り機は、21世紀にはいると家庭用の冷蔵庫サイズまで縮小。

さらにそこから電子レンジサイズまで小型化が加速度的に進み、ついに上の図のようなガラケーの携帯電話サイズにまで進化したのです。

スマホで簡単に「遺伝子を解析できるアプリ」が開発される! 遺伝子解析はどこでもできる時代へ
(画像=中心部には帯電した小さな穴が無数に存在する / Credit:NANOPORE、『ナゾロジー』より引用)

この超小型遺伝子読み取り機には上の図のような「ナノポア」と呼ばれる帯電した微細な穴が複数埋め込まれています。

スマホで簡単に「遺伝子を解析できるアプリ」が開発される! 遺伝子解析はどこでもできる時代へ
(画像=DNAやRNAが穴の内部に入ると電流に変化がうまれ、読み取り機に検出される / Credit:NANOPORE、『ナゾロジー』より引用)

そして装置は、上の動画のように遺伝子(DNAやRNA)がこの帯電した穴の内部を通るときに生じる電流の変化を測定することで、塩基配列を読み取ることができる仕組みです。

ただナノポアを利用するタイプの超小型読み取り機から得られる生データは非常に複雑であり、ヒトの目に見える形の塩基配列に変換するには、スーパーコンピュータをはじめとする大型演算機が必要でした。

そのためいくら読み取り機が小型化しても、利用可能な人間は非常に限られていたのです。

超小型の遺伝子読み取り機(DNAシーケンサー)を開発しても、超大型の演算機(DNAアナライザー)の存在により、遺伝子読み取り技術はなかなか普及しませんでした。

しかし、ある一人の天才少年によって事態は大きく変化します。

超大型演算器の代替品は「スマホのアプリ」

スマホで簡単に「遺伝子を解析できるアプリ」が開発される! 遺伝子解析はどこでもできる時代へ
(画像=読み取り機をスマホにつなげるだけでいい / Credit:SmidgON、『ナゾロジー』より引用)

14歳の頃からアプリ開発を行ってきたアスピン・パラトニック氏は、その才能を買われて15歳という若さで遺伝情報の解析技術を大学で学ぶようになりました。

そして8年の歳月をかけて、パラトニック氏は、ついに測定値をスマートフォン(iPhone8)で分析するアプリ「iGenimics」の開発に成功しました。

読み取り機が記録した生データ(電流の変化)を塩基配列に変換して表示させるには、上の図のように接続するだけでOK。

誰でも簡単に塩基配列を表示することができます。