2つの異なるミトコンドリア遺伝子は何を意味するのか?

100年生きるムカシトカゲは「ミトコンドリア遺伝子を2つもつ」唯一無二の生き物だった!
(画像=ミトコンドリア遺伝子を読み取っている図。 / Credit:JRobert Macey et al.,CommunicationsBiology(2021)、『ナゾロジー』より引用)

DNAの解読や配列を決定する研究では、DNAを小さな断片に切り刻んで「読み取り」、それを再構築して解析していきます。

この研究中に、今回のチームは、ムカシトカゲのミトコンドリア遺伝子の配列が、多すぎるということに気がついたのです。

これは調べていくと、同じDNAのセクションに2つの異なる配列が存在するためだとわかりました。

そこで、チームはこの2つの完全に機能するミトコンドリア遺伝子を、丹念に組み立てていき、両者を比較してみたのです。

すると、この2つ出来上がったミトコンドリア遺伝子は、10.4%の差異があったのです。

それってどれくらい違うの? と疑問に思う人もいるかもしれませんが、たとえばヒトとチンパンジーのミトコンドリア遺伝子を比較すると、その差異は8.9%だといわれています。

つまり、1匹のムカシトカゲの中から、ヒトとチンパンジーそれぞれよりも違いの大きい2つのミトコンドリア遺伝子が見つかったのです。

この状況は他の脊椎動物とは明らかに異なります。

この2つの遺伝子セットを、オタゴ大学のゲノミクス研究者であるラウラ・ウルバン氏が分析したところ、代謝に関連する遺伝子が変化しているということがわかりました。

動物の細胞代謝は極端な環境に対処するために調整される部分です。

つまり、この二重ミトコンドリア遺伝子は、低温環境に対してムカシトカゲに柔軟性を与えている可能性があるのです。

「ムカシトカゲは、今まで見た中でもっとも複雑なミトコンドリア遺伝子を持っています」と研究チームは語っています。

この研究は、ムカシトカゲの特異さ示すとともに、ミトコンドリア遺伝子が持つ代謝に関する機能を明らかにする可能性があります。

それは人間の代謝性疾患の治療についても、役に立つ知見を与えてくれるかもしれません。


参考文献

Smithsonian Magazine

sciencenews

元論文

Evidence of two deeply divergent co-existing mitochondrial genomes in the Tuatara reveals an extremely complex genomic organization


提供元・ナゾロジー

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