ムカシトカゲは、その名の通り、現存するもっとも古い爬虫類グループです。

しかしその見た目とは異なり、実際はトカゲとかなり異なる生き物だと言われています。

その理由の一端が、1月29日に科学雑誌『Communications Biology』に発表された新しい研究より明かされました。

研究によると、ムカシトカゲは、生物にとって重要なミトコンドリア遺伝子を2つ持っているというのです。

これは一体何を意味するのでしょうか?

目次
トカゲのようでまるで別の生き物 ムカシトカゲの不思議
生物を支配するミトコンドリア

トカゲのようでまるで別の生き物 ムカシトカゲの不思議

100年生きるムカシトカゲは「ミトコンドリア遺伝子を2つもつ」唯一無二の生き物だった!
(画像=古い図鑑の中で紹介されているムカシトカゲ。 / Credit:Wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

ムカシトカゲは、見た目は非常にトカゲによく似ています。

そのため、名前にもトカゲと入っていますが、実際似ているのは表面的な部分だけで、その中身は現存する爬虫類のいずれとも異なっています。

遺伝的に彼らは恐竜よりも古い、現存する最古の爬虫類グループだとされており、ニュージーランドの一部の地域に、たった2種しか現存していません。

彼らは非常に長寿であり、100年以上の寿命を持ち、また多くの感染症に対して耐性があります。

そしてもっとも他の爬虫類と異なるのは、驚くほどの低温耐性を持っているという点です。

爬虫類は基本的に低温では活動できなくなりますが、ムカシトカゲは5℃近くまで活動を続けることができるのです。

そのため、ムカシトカゲは生物学の興味の対象となっていましたが、新たな研究は、ムカシトカゲのミトコンドリア遺伝子に、他の生物にない特徴を発見したのです。

生物を支配するミトコンドリア

100年生きるムカシトカゲは「ミトコンドリア遺伝子を2つもつ」唯一無二の生き物だった!
(画像=ミトコンドリアの電子顕微鏡画像。 / Credit:Wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

ミトコンドリアは、生物の細胞内にある小さなエネルギー工場です。細胞活動に必要となるエネルギーはほとんどが、このミトコンドリアによって供給されています。

そんな細胞の1器官として働いているミトコンドリアですが、生物の細胞核とは別に独自の遺伝子を持っています。

研究によるとミトコンドリア遺伝子は、老化やヒトのがん、代謝や筋肉、神経疾患にも関与していると言われています。

完全な共生関係を築いているとはいえ、独自の遺伝子を持つミトコンドリアが、これだけ生命の重要部分を握っているというのは驚くべきことです。

そのため、1995年には東北大学の研究者だった瀬名秀明氏が、ミトコンドリアが反乱を起こすという内容のホラー小説を発表し話題になったことがあります。

この『パラサイト・イヴ』という作品は、映画化さらにはゲーム化までされて一大ブームとなったので、この作品でミトコンドリアの名前を記憶したという人も多いかもしれません。

100年生きるムカシトカゲは「ミトコンドリア遺伝子を2つもつ」唯一無二の生き物だった!
(画像=1998年にスクウェア・エニックス(当時スクウェア)によってゲーム化されたパラサイト・イヴ。ミトコンドリアの反乱によってオペラ劇場の観客が発火炎上するという衝撃的なシーンから始まる。 / Credit:SQUARE ENIX、『ナゾロジー』より引用)

ミトコンドリア遺伝子は、独自の遺伝子でありながら、生物それ自体の遺伝子と同じくらい非常に重要な存在です。

通常、ミトコンドリア遺伝子は母親のものが受け継がれます。そのため、生物はミトコンドリア遺伝子を1つしか持っていません。

しかし、ムカシトカゲは驚いたことに、このミトコンドリア遺伝子を2つ持っているというのです。