人工交配や、まれに自然のいたずらによっても生まれる魚の雑種。多くはわかりやすい名前がつけられていますが、ときに「なぜそんな名前が?」と一見不思議に思えるものもあります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
オイカワとカワムツが交配
大分県佐伯市にある「道の駅やよい」に併設されている淡水魚水族館「番匠おさかな館」横を流れる番匠川の魚を中心に展示しているこの水族館で、とある「雑種」の魚が確認され、話題となっています。
その魚は「オイカワ」と「カワムツ」の交雑で生まれたと思われるもの。近くの井崎川で2019年に捕獲された幼魚を飼育していたところ、今年になり両種の特徴を備えていることが判明。雑種と確認されたそうです。

5月に入って体に婚姻色が現れたのですが、薄いしまが縦にあり、青色と赤みがかった婚姻色はオイカワの特徴である一方、黄色いひれと、体の下の赤色、横に暗色の線があるというカワムツの特徴も備えていたといいます。
同館では「オイムツ」と呼び、観察を続けていくそうです。
魚の「雑種」事情
雑種とは交雑(異種の生物同士の交配)によって生み出された個体のことですが、魚の雑種の場合は人工的な交雑で生み出されたものと、自然な交雑によって生み出されたものがあります。上記の「オイムツ」は後者のひとつです。
魚の雑種においてとくに有名なもののひとつと言えるのが、イシガキダイとイシダイの雑種「イシガキイシダイ」です。自然界でもまれに発生するのですが、魚の養殖技術開発で名高い近畿大学によって人工的にも生産されており、イシダイの繁殖力の高さとイシガキダイの成長スピードの速さを兼ね備えるといいます。
また、養殖魚として需要が高いサケ・マス類でも、より利用性の高い雑種の研究が日々進められており、ニジマスとイワナをかけ合わせた「ロックトラウト」などが知られています。
食用以外には、観賞魚の世界でも雑種は「ハイブリッド」と呼ばれ高値で取引されます。