機能しなかった防衛機能
戦略的に価値があった室蘭。まちのいたる場所に、米軍を迎撃する設備があった。いずれも軍事上の理由や建設中などで機能しなかった。
室蘭飛行場
本土決戦に備えて丘陵地の八丁平に突貫工事で作られた飛行場。民間人も狩り出したが、板張りであったため、航空機が飛び上がるなど使いにくさがあった。艦砲射撃時には、戦力温存のため迎撃機を出さず、まちは敵のなすがまま激しい攻撃を受けた。
幻の室蘭要塞
小橋内町の高台の一角に建設中だった。高さ約5メートル、厚さ約2メートルのコンクリート製。巨大なカノン砲(大砲)2門が収納できるスペースがあり、防衛機能が期待されたが、砲台ができた日に艦砲射撃を受け、崩壊した。
要塞とは別にカノン砲を持つ防衛部隊もいたが、砲身は米軍の進行方向とは逆の登別沖に向いており、無力だった。これらは、現在も壁など一部が遺構として残り、当時の凄惨さを物語っている。
戦争に巻き込まれた人々
この艦砲射撃のターゲットは、室蘭が誇る工場群である。標的を外した弾は、近隣の住宅街を地獄に変え、罪のない多くの民間人の命を奪った。彼らの中には日本に強制連行された中国人や韓国人も含まれていた。
両工場の「お膝元」である住宅街では、四肢など肉片がいたるところにぶら下がっていたらしい。身元が分からなくなった遺体は、地元のイタンキ浜に埋められた。