エンタメ性が加わった「ど冷えもんガチャ」

普及し始めた当初はラーメンや餃子が多かったが、現在その使い方が変化している。
その1つが、何が出てくるのか分からないトイカプセル「ガチャガチャ」のようなエンタメ性だ。

例えば大阪・西中島南方の焼肉店「匠」が営む肉中島レジャービル前の「ど冷えもん」では、「1000円ガチャ」と題し、1000円均一で最大6000円相当のステーキ肉が当たるガチャを実施。これがインスタグラマーのSNSで拡散され、話題になった。
また東京・品川の「PiPPon」では「ど冷えもん」9台に加え、冷凍、冷蔵、常温の自動販売機1台、計10台を並べ、それぞれの自動販売機につき「名店の味」や「大阪の味」、「餃子」、「韓国料理」といったテーマで違う店の味を集めた「自動販売機のセレクトショップ」を運営。土地の有効活用の新しいビジネスとして注目を集めている。
一方、食品冷凍自動販売機用の商品を全国から集め、卸販売するサービスも現れた。冷凍自動販売機商材のセレクトショップを標ぼうするGABARA(大阪府)では、街の名店とタッグを組み、冷凍食品商材を開発。「ど冷えもん」に合う商品規格を揃えた冷凍商品を多数揃え、「ど冷えもん」所有者に卸す。
これによって、飲食店でなくとも、土地の有効利用を考えている不動産オーナーが品質の高い冷凍商品を扱うことができ、お客に喜んでもらえる。また、例えば中華料理店が自店の商品に加え、自店では取り扱いのないスイーツを売りたいと思った場合に、他店のスイーツを仕入れて売ることもができる。逆も然りで自店の冷凍商品を他店に卸し、それがまた新たな売り上げの柱になることも狙っている。
こうした調理師でなくとも、どこでもシェフレベルの料理を食品冷凍自動販売機で提供できる意味を含め「どこでもシェフ」ブランドとして、現在、認知を拡大している。
探せるアプリ、「ど冷えもんGO」をリリース
そして消費者の利便性をさらに高めるサービスも登場した。「ど冷えもんはどこにあるのか」「どんな商品が買えるのか」という多くの問い合わせを解決するために今年7月に誕生したスマートフォン向けアプリ「ど冷えもんGO」だ。

ユーザーは全国の「ど冷えもん」を検索してメニューをチェックしたり、欲しい商品の在庫をチェックしたりできる他、「マイど冷えもん」に登録すると商品の感想をコメント・シェアできるようになっている。
こうした周辺サービスやコロナ禍が続く中で今後、食品冷凍自動販売機は増えるだろう。土地の有効活用に用いられる他、例えばフード系フェスでは、その場で食べる商品はできたてを手売りし、持ち帰り用商品は冷凍自動販売機で対応してオペレーションを円滑にすることも可能だ。また、店内で販売する商品と冷凍自動販売商品をガラリと変えて差別化を図るなど、売り方のバリュエーションが豊富になっている。
前述の焼肉「匠」では「1000円ガチャ」の他、今後は自社レシピの弁当や餃子、カレーといったレンジアップの冷凍食品をOEMで製造し、企業の休憩所などに設置する「ど冷えもん」で販売する計画があるという。このように今後も広がる使い方に注目したい。
「想像を超えた使い方が生まれていて、私たちもオーナーの方から学んでいます」とはサンデン・リテールシステム、広報室長の芳賀日登美氏。
「匠」や「PiPPon」のように、提案や楽しませ方によっては冷凍自動販売機そのものが、集客ツールであり名所になる可能性を秘めている。それは首都圏だけでない。地方こそ、普段は行けないような首都圏や遠方の名店の味が楽しめるとしたら、なんと楽しいだろうか。
提供元・DCSオンライン
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