デジタル人間

世の中DX(デジタルトランスフォーメーション)花盛りです。とにかく片っ端からデジタル化を進めるというわけでDXの人材探しに企業は血眼です。では人間そのものはどうなのか、といえば私はデジタル化が着実に進んでいるとみています。

人は100人いれば100通りの考えがある時代ははるか前に消え、いくつかの選択肢から選ぶようになっています。それは情報化と複雑化する社会の要請です。試験問題が選択肢になるのも仕事がマニュアル化されるのも人の個性を抑え込むための手段です。

SNSは人の考えや興味などのある一分野について賛成、反対という踏み絵を求めます。私が学生の頃、「日本人はYES-NOをはっきり言わない」と習ったものですが、今では思想のデジタル化が進み、相当明白になってきたと思います。ならばある人が10のSNSをやっていて10の判断を行うと仮定してその人の特性を分析すれば概ね人のDX化が可能になります。これが今流行の恋愛や結婚のマッチングサイトに応用されるわけです。そして結婚相手はサイトで探すよね、ととてもドライな恋愛に変貌しました。

ところがアメリカの投資専門家が今後推す業種はDXではなくヘルスケア業界。カナダで今日発表になった雇用統計は2カ月連続のマイナス。注目されたのがヘルスケア部門で22千人がポジションをを失ったのですが、その理由が「燃え尽き症候群に伴う離職」。看護師の欠員は5年前の3倍にもなっており、外国人労働者への門戸が着実に広がっているのが現状です。

これが何を意味するかと言えば「リアル社会やアナログに対応できない人が増えた」ということでしょう。来年あたりからは仮想現実とリアルの社会を組み合わせたビジネスが花盛りになると思いますが、我々人間社会はDXではなく、AX(アナログトランスフォーメーション)も忘れてはならないということでしょう。

後記
先週末3日間、バンクーバー最大のアニメイベント、アニレボに出店した話は既にしましたが、この3万人程度のイベントの出店者に日系がほとんどいないのです。アニメはアメリカ源流のアメコミ(アメリカンコミック)と日本のアニメの二大源流があります。

今回のイベントは完全に日本アニメでスーパーマンのようなアメコミはありません。参加者は怪しい日本語のTシャツを着た人も多く明らかに日本ファンですが、ビジネスをしているのはローカル、そして中国韓国系のみならずカナダ人も多く、日本は完全にビジネス機会を失っています。今回の出店には日本の某最大手のアニメグッズ会社との共同出店のはずでしたが当社の単独出店になりました。実に残念な思いでした。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年8月6日の記事より転載させていただきました。

文・岡本 裕明/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?