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凍った針で心筋を壊死させ遺伝的操作により心臓病を再現する
完璧な心臓オルガノイドは移植源になる?
凍った針で心筋を壊死させ遺伝的操作により心臓病を再現する

完成したヒト心臓オルガノイドに対して研究者たちはまず、心筋梗塞を再現するために、凍った鋼の針を押し当て、細胞を壊死させる実験を行いました。
すると傷口に治癒細胞が集まってきて、損傷を修復するためのタンパク質を生産していることが確認されました。
このような再生は3Dプリントで作った心臓ではみられなかったものです。
次に研究者たちは心臓オルガノイドが形成される前に、先天的心臓病にかかわるシグナルと転写因子を破壊してみました。
すると、心臓オルガノイドは先天的心臓病である「左心低形成症候群」で観察されるような、劇的な内部空洞の狭まりを発症しました。
この結果は、自己組織化された心臓オルガノイドが遺伝病などの再現が可能であり、人体実験の代替として有用であることを示します。
完璧な心臓オルガノイドは移植源になる?

今回の研究により、心臓オルガノイドの自己組織化に初めて成功しました。
また細胞本来がもつ能力により形成された心臓オルガノイドは、心筋梗塞や先天的心臓病ですら再現可能であることも示されました。
研究者たちは今後、複数の心室と心房を備えた、より完璧な心臓オルガノイドの自己組織化を目指していくとのことです。
成功すれば、本物の人間の心臓により近い実験対象として心臓オルガノイドを使えるだけでなく、将来的には本人の細胞由来の移植心臓の供給源となるかもしれません。
参考文献
Tiny ‘hearts’ self-assemble in lab dishes and even beat like the real thing
元論文
Cardioids reveal self-organizing principles of human cardiogenesis
提供元・ナゾロジー
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