筋発達と体脂肪減量は同時に行えないというのが定説になっている。ひとつのやり方で両方が得られればいいのだが、本当にそのような方法はないのだろうか。HIIT(ハイ・インテンシティ・インターバル・トレーニング)は有酸素運動とウエイトトレーニングの両方を組み合わせた運動法だ。今回はHIITを活用することで、2つの目的を同時に果たせるかどうかを検証してみたい。
パーソナルトレーナーの中には、HIITだけで構成されたワークアウトを推奨する人もいるようだ。そこまで心酔している理由を尋ねると、きちんとした研究結果が得られているからだと言う。しかし、実際のところどうなのだろうか。理論と現実は異なることもある。
HIITは本当に実験で示されているとおりの効果をもたらすトレーニング法なのだろうか。また、誰にでも効果的なのだろうか。
HIITの効果を示す実験
HIITは、ハイ・インテンシティ・インターバル・トレーニングの頭文字を取った呼び名である。特に脂肪の酸化を促しやすいトレーニング法で、つまりは運動のためのエネルギー源に体脂肪が燃やされるということだ。2015 年に行われた実験では、本格的にトレーニングを行うランナーたちと、趣味で走るランナーたちが調べられた。被験者たちの脂肪燃焼率を比較したところ、前者は33%であったのに対し、後者は16%だった。つまり、本格的なランナーたちのほうがより多くの脂肪を燃焼させる運動を行っていたということになる。
本格的なランナーたちと趣味で走るランナーたちの運動を具体的に比較してみたところ、前者は後者に比べるとはるかに高い強度で運動が行われていたことが分かった。HIITで行われる運動は有酸素運動だ。有酸素運動を行うことで心肺機能が刺激を受け、循環器系が強化されていく。心肺機能の向上や循環器系の強化は競技能力にプラスになるばかりか、健康な体をつくる上でも大切なことだ。研究によると、HIITには炎症を抑制したり、インスリンの感受性を改善したり、酸化によるストレスを軽減する働きも確認されている。これらの事柄はさまざまな循環器系の病気を予防することにつながる要素であり、心臓病や発作などの発症リスクを低下させることになるのである。
2014 年に、16週間にわたって被験者たちにHIITを行ってもらう実験が行われた。被験者たちは上半身(アーム・クランクマシン)と下半身(サイクリング)の種目をHIITのやり方でを行った。実験の結果、被験者たちの有酸素能力が著しく向上したことが分かった。また、運動を行った上半身も下半身も筋量の増加が認められた。つまり、16週間続ければHIITは健康づくりに貢献し、体脂肪を燃焼させ、筋量を増やす働きをもたらすことが分かったわけだ。
HIITのやり方
HIITはインターバルトレーニングの一種だ。インターバルトレーニングとは、制限時間内に最大出力を続けたあとクールダウンのための運動をそのまま継続する。これを交互に繰り返すトレーニング法のことである。クールダウンのための運動は種目を変えてもいいし、強度を落としただけで同じ動作を行ってもかまわない。あるいは、クールダウンの時間は何も行わずにじっとしていてもいい。
一般的には全力を出し切る動作を30秒間続けたら、クールダウンの時間を60秒設け、再び全力で30秒間、クールダウンを60秒間……というように行っていく。あるいは、スピードプレイ(またはファートレックトレーニング)と呼ばれるインターバルトレーニングでは、決められた距離を異なるスピードで走る。ただし、スピードプレイは全体で45分間も続くため、たとえ断続的であるとはいっても全力を出すことは難しい。
タバタ社が考案したHIITでは全体を4分間と定め、この中で最大強度の運動を20秒間、休息時間を10秒間として、これを8回繰り返す構成になっている。行う運動は、例えば自重を使ったトレーニングでもいいし、バイク、クロストレーナー、トレッドミルでも構わない。
ただし、トレッドミルだと全力で20秒間走ったあと、マシンからすぐに飛び降りなくてはならず、10秒間の休息のあとにマシンに再度飛び乗ることになるので危険が伴うことになる。このタバタ式を参考にして、ぜひHIITに挑戦してみてほしい。週に2〜4回の頻度でHIITトレーニングを行うと明らかに体つきが変化していくのを実感することができるはずだ。