アンチエイジングで肉体を衰えさせないためにトレーニングしている女性は多いと思います。しかしトレーニングと同じように大事なのが、運動することで生まれる活性酸素への対処です。まるで、身体を“錆びつかせる”ように蝕む「活性酸素」とは一体何なのでしょうか。
桑原塾 主宰。スポーツサプリメント『パワープロダクション』の産みの親。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&トレーナー協会)PDA。武藤敬司氏率いるW-1(レッスルワン)コンディショニングコーチ。国内外のトップアスリートに対して独自のコンディショニング指導を行い、各種スポーツ誌への執筆や講演会を実施するなど多方面にわたって活動中。
活性酸素の役割
そもそも活性酸素には細菌やウイルスをやっつける役割があります。もし活性酸素がゼロになってしまうと、細菌やウイルスがそのままになるので、身体に害を及ぼすことになる。つまり活性酸素は人間にとって必要なものなのです。
ここで問題になるのが、活性酸素の量がどのくらいなのかということ。活性酸素が細菌やウイルスをやっつけるために必要な量を超えると、今度は細菌やウイルス以外の細胞も壊してしまうのです。まるで水に濡れた鉄が徐々に錆び付いていくように、必要以上に作られた活性酸素は体内の細胞を少しずつ壊していきます。
メディアでも活性酸素が大きく取り上げられることはありますが、他のテーマに比べて反応が薄いのは、数日間、活性酸素が必要以上に多かったとしても、そこで目に見えるようなダメージはないからです。しかしケアをせずに活性酸素が多い状態を放っておくと、徐々に身体が劣化していき、いつのまにか大きなダメージに繋がります。頑丈な鉄の棒が知らない間に錆び付いて、最終的には折れてしまう。そういったことが人間の身体に起こるのです。
人間の身体は約60兆個の細胞でできていて、その一つ一つが不飽和脂肪酸という脂肪の膜に覆われています。活性酸素はこの膜を破壊します。60兆個もある細胞のうち、ほんの一部が破壊されても特に問題はありません。しかしそれが継続的に続き、影響が出るほど破壊されてしまうと、身体にさまざまな弊害が発生します。
活性酸素が生まれる要因
運動
活性酸素が生まれるプロセスにはいくつかあって、圧倒的にたくさん生まれるのは運動です。運動する=エネルギーを作り出すことで、一般的には糖質や脂質を材料にしてエネルギーが作り出されるのですが、その過程で活性酸素も同時に作られます。身体にいいはずのトレーニングや運動によって活性酸素が作り出されていることを忘れてはいけません。
活性酸素は大きく分けて4種類に分類されます。まずは体内でエネルギーを作り出したとき、それと同時にスーパーオキシドアニオンという活性酸素が作られます。このように体内に活性酸素を処理するSODと呼ばれる酵素があり、その酵素の働きによってスーパーオキシドアニオンは過酸化水素は上手く分解されれば酸素と水になるのですが、全ての過酸化水素が酸素と水になることはほとんどありません。上手く分解されなかった過酸化水素は体内の鉄分、銅、ミネラルに反応し、さらに強烈なハイドロオキシラジカルという活性酸素が生まれます。体内では最初に作られた活性酸素(スーパーオキシドアニオン)を処理しようとした結果、最終的により強烈な活性酸素(ハイドロオキシラジカル)が残ることになるのです。
日焼けや紫外線・タバコ・ストレス
もうひとつの活性酸素は一重項酸素(いちじゅうこうさんそ)と呼ばれるものです。これはエネルギーを作り出すことで生まれるものではないのですが、日焼け、紫外線、タバコ、ストレスといった外的要因で作り出されます。日焼けで肌にダメージが出るのは、一重項酸素の影響が大きいです。またタバコを一本吸うごとに活性酸素は100兆個生まれるとも言われています。少し専門的な言葉を使って説明しましたが、活性酸素は運動でも作られ、日常生活における外的要因でも作られる。私たちは活性酸素を作りやすい環境の中で生きているのです。