火星には水があります。これは火星の調査や、将来的にはテラフォーミングを目指す人類にとって明るいニュースです。
しかし、残念なことに火星の水のほとんどは塩水です。塩水は飲水にできないほか、電気分解の材料にするためにも精製が必要となり、利用するには非常にコストが掛かります。
しかし、ワシントン大学の技術者チームは11月30日に科学雑誌『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』で発表した新しい研究において、塩水をそのまま電気分解して酸素と水素を生成するシステムを開発したと報告しています。
これは地球の海水にも応用できる技術だといいます。
火星に多くの塩水がある
NASAの「火星探査機フェニックス」は2008年夏に、火星地表を掘削し、地下に水分が隠れていることを発見しています。
火星の地下では過塩素酸マグネシウムなどの存在によって、水が液体の状態を保った貯水池があるようなのです。
火星は非常に寒い環境で、発見される水は基本的に凍っています。
液体の状態を保った水は土壌の塩分を含むことで、凝固点が下がっているものだけで、不純物の多い状態です。
残念ながら、こうした水は飲水に利用することができません。また電気分解の原料にも使うことができないのです。
電気分解で火星に酸素を作る
中学の理科で実験した記憶があるでしょうが、水は電気分解することによって水素と酸素を生成することができます。
火星のような過酷な環境を調査、開発しようという場合、酸素(呼吸用)と水素(燃料用)を同時に確保できるこの技術は一石二鳥の素晴らしい技術です。
しかし、現在の水の電気分解技術は、精製水を使って行われており、不純物の混じった水には対応していません。
これは地球でも水素を作るために多くのコストを必要としてしまう原因でもあります。
火星の環境で液体から不純物を取り除き精製水を作るとなると、かなり大変な問題になります。
現在火星に向かっているNASAの火星探査機「パーサヴィアランス(Perseverance)」は火星大気から酸素を作る実験機器「MOXIE」を搭載しています。
MOXIEは、二酸化炭素を電気分解して酸素を作り出すことができる装置です。ただ、高温が必要でエネルギーのコストがかかる他、酸素しか生成できません。