不思議な佐渡金山世界登録遺産の書類不備問題

自民党の佐藤正久外交部長が切れまくっています。韓国からのチャチャも入り、あれだけ話題になった佐渡金山の世界登録遺産に関して末松信介文科大臣が来年の登録断念ともいえる秋までの書類再提出を発表しました。一部からは「書類不備?、なんだ、それは!」という厳しい声があがります。政治的にも満を持して対応すべき内容でしたが奇妙な落とし穴があったということです。

そもそもは申請のタイミングが間に合っていませんでした。本来は21年9月末がユネスコ側の暫定版提出期限ですが、日本政府が暫定版を出したのは21年末で正式申請は2月1日の申請期限日でした。受け付けてもらったものの内容の中で「西三川砂金山の水路が途中で途切れている点」の補足説明不備が指摘されました。これが今年2月28日。

ところがユネスコは2月1日時点で書類の修正の受付期限も閉め切ったため、対応策として「説明不備はない」と書類修正せずにユネスコを説得しようとしたわけです。ところがユネスコ事務局が7月27日に「日本側の説明ではダメ。不備は不備(=つまり今年はプロセスしない)ということを通告したため、2月末から粘ったものの決着がついてしまった、ということです。

この流れで見るとユネスコの事務方のプロセスに不明瞭な点はなく、むしろ、日本政府が期限ぎりぎりでの正式申請で一発合格を狙ったわけだったのです。これはいくら何でも無謀です。ではなぜ、昨年9月末に書類を出せなかったのか、ですが、佐渡金山の世界文化遺産申請は長年の地元の夢でしたが、韓国側の反対を含めた外野の整理に時間がかかった、これが本当の理由だろうとみています。

そもそも時間に負けていたわけです。これは政府の失態と言われても致し方ないのですが、政治家がそれを言っちゃおしまいよ、と思います。役人に優秀な人がいなくなったと以前、このブログで書きましたが、結局、官僚が不人気職になったことが影響したともいえそうです。不人気職にした一因は政治家にあることをよく考えてもらいたいものです。

後記
この1週間で立て続けに3人の日本人の若者と会ったのですが、その3人の共通点は日本の大学を卒業後、就職をせず、海外に飛び出してきている点です。一昔前は就職もしないでの海外は相当変わり者とされたのですが、もしかするとこれが今のトレンドになりつつあるのでしょうか?その背景は二つあり、「就職が怖い」と「日本の会社には入りたくない」のようです。前者は当事者のメンタル上の問題、後者は日本の将来への警鐘です。明らかに何らかの地殻変動が起きているような気がします。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年7月30日の記事より転載させていただきました。

文・岡本 裕明/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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