渦を介したエネルギーリサイクル

エネルギー節約の鍵となったのは、魚の尾がうみだす水の渦です。
水の渦は先頭の魚の動きによって生じた残余エネルギーの塊であり、後方の魚はこの渦に対して上の図のように、尾ひれを適切な位置に配置することによって、渦の運動エネルギーを推進方向に向けたエネルギーへと変換(リサイクル)していたのです。
また先頭の魚が残した渦から継続的に推力を取り出すには、先頭の魚と後方の魚の間に、尾の動きの同期があると有利であることがわかりました。
しかしこれだけではエネルギー節約説を証明することはできません。
渦のエネルギーをリサイクルする節約モデルは非常に優秀ですが、本当の証明を行うには、現実の魚でも同じ渦のリサイクル現象がみられなければなりません。

そこで研究者たちはペアで動く金魚の動きをAIで分析し、渦の利用モデルが現実世界の金魚たちの間で実際に発生しているかを調べました。
結果、現実の金魚たちの挙動も、渦をリサイクル可能な動きだったことが判明します。
仮説から常識へ

今回の研究により、魚が群れる理由がエネルギー節約のためであることが実験的に証明されました。
魚たちは周囲の魚の動きによって生じた渦の運動エネルギーを尾で受け止めることで、前方への推進力にリサイクルしていたのです。
また効率的な渦の利用には、先頭の魚との動きの同期が重要であることが判明します。
この同期の重要性は、シミュレーションによる実験では十分に理解されておらず、今回ロボットを使った実測によってはじめて明らかになりました。
「渦位相マッチング」と新たに名付けられたこの省エネ方法は、人間が群れで活動する水中ドローンを開発するにあたっても、重要な技術となるでしょう。
人間が自然から学ぶことはまだまだ多そうです。
参考文献
sciencetimes
提供元・ナゾロジー
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