最強の生存能力を有するクマムシに、新たな特性が発見されました。
10月14日に『Biology Letters』に掲載された論文によれば、新種のクマムシは、暗闇で青く光ることで有害な紫外線から体を防御していることが示されました。
しかしクマムシが暗闇で光ることが、どうして紫外線から身を守ることにつながるのでしょうか?
目次
新種のクマムシは大学の壁に生えているコケから発見
暗闇で青く光るクマムシ
新種のクマムシは大学の壁に生えているコケから発見

クマムシは地球上で暮らすにはオーバースペックと言える数々の耐性を持っていることが知られています。
クマムシは絶対零度であるマイナス272℃から水の沸点を超える150℃の温度に耐え、宇宙空間の真空でも生存することが可能。また今年8月に発表された研究では、クマムシはDNAの周囲に電気シールドを展開することで、致命的な放射線から身を守っていることが示されました。
さらに今回、クマムシの紫外線の防御に関する新たな耐性がインドの研究者によって明らかになったのです。
インドのバンガロールにあるインド科学研究所のエスワラッパ氏は、クマムシの極端な耐性の背後にあるメカニズムを研究している研究者の1人です。ある日、彼は偶然大学のキャンパス内の苔から新種のクマムシを発見します。
そして新種のクマムシの耐性を調査するため、致死量の紫外線を15分間照射する過酷な実験を行いました。
15分間の紫外線照射はほとんどの微生物を殺し、人間の皮膚にガンをはじめとした病変を与えるのに十分な放射量です。
しかし新種のクマムシは既存のクマムシと同様に、強烈な紫外線に対して動じないばかりか、追加で行った1時間に及ぶ長時間の照射も生き延びることができました。
実験はそこで終了かと思いきや、紫外線照射を終えたあと興味深い変化が起こったのです。
暗闇で青く光るクマムシ

紫外線を生き延びた新種のクマムシですが、研究者が照射機のスイッチを切ると、クマムシを入れていたチューブ全体が青く光りはじめたのです。
研究者は見たこともない現象に仰天し、新種のクマムシの発光メカニズムを分析しはじめました。
すると、クマムシを磨り潰した液体に蛍光物質が含まれていることが明らかになります。
また、この蛍光物質は紫外線のエネルギーを吸収し、可視光域にある青色の光として放出する性質があることも判明しました。
ただ気になる問題は、なぜ新種のクマムシは蛍光物質を体内に蓄えているかでした。
蛍光物質を体内に蓄える生き物たちの多くは、蛍のように光を生殖相手に対するアピールのために使っています。
そこで研究者は、蛍光物質の役割を解き明かす実験を行うことにしました。