1. 日本経済の特殊な事情
前回は、1人あたりGDPについて実際の推移とバブル直前を基準とした仮想の成長率を比較してみました。
日本は仮にバブル期に嵩上げされて豊かになっていた面があったとしても、その後の停滞が長く続くことで本来の成長曲線からも大きく後れを取ってしまっています。
日本経済の推移は非常に特徴的ですね。名目GDPは停滞が続いていますが、実質GDPは成長しています。そして、平均給与は名目も実質も停滞しています。
今回は、改めて実質GDPや実質給与の特徴についてて眺めてみましょう。

OECD統計データ より、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)
図1が日本の1人あたりGDPと平均給与の名目値と実質値について、1991年の数値を基準(1.0)とした成長率をグラフ化したものです。
赤が1人あたりGDPの名目値、ピンクが1人あたりGDPの実質値、青が平均給与の名目値、緑が平均給与の実質値です。
まずは名目値(赤と青)から見てみましょう。
これまでのブログでも見てきたように、名目の1人あたりGDPも平均給与も1997年までは上昇傾向でしたが、その後減少、停滞しています。そして2012年ころからやや増加傾向となっています。
一方で、実質値(ピンクと緑)について眺めてみると、1人あたりGDPは1993年頃から増加傾向が続いていますが、平均給与は横ばいが続いています。
実質値は、名目値を物価指数(デフレータ)で除したものです。GDPを実質化する際に用いる物価指数は、GDPデフレータ(総合値)です。平均給与を実質化する際に用いる物価指数は、GDPデフレータ(家計最終消費支出)となります。
両指標に用いる物価指数が異なる点にも注意が必要ですね(あくまでもOECDのデータの場合になります)。
2. 名目値では停滞し続ける日本経済
続いて、1人あたりGDPと平均給与の名目値の成長率について比較してみましょう。

OECD統計データ より、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)
図2はOECD各国の1人あたりGDP(名目値)についての成長率を比較したグラフです。
日本(青)は横ばい傾向が続いているのに対して、他国は右肩上がりで成長しています。リーマンショックを機にイタリア(黄)が停滞気味なのが特徴的です。

OECD統計データ より、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)
図3が平均給与(名目値)の成長率を比較したグラフです。
やはり日本だけ停滞が続いていて、他国は右肩上がりに成長しています。
上記は1991年を基準にした名目値の成長率について比較したグラフですが、名目値自体の比較については、下記の記事もご参照下さい。
参考記事: 「衰退先進国日本」の実態とは
参考記事: 安くなった日本人