関節の痛みは電波で治療するようになるかもしれません。

11月16日に『北米放射線学会(RSNA)』の年次総会にて発表された内容によれば、患部に挿入された針に電波を放射することで、痛みを取り除くことに成功したとのこと。

なにやらおそろし気な治療法ですが、なぜ電波で痛みがなくなるのでしょうか?

目次
現状、関節痛の根治は人工関節しかない
痛みの発信源を焼き殺す

現状、関節痛の根治は人工関節しかない

「電波」で関節痛を取り去る方法が発表される!
(画像=人工関節への置換はリスクもある / Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

現在、重度の関節痛を根治するには、人工関節に置き換えるしか対処法がありません。

そのため現在、多くの人々は強力な鎮痛剤(神経ブロックなどの麻酔)で痛みを抑える方法を選んでいます。

しかし鎮痛剤の効き目は時間と共に低下するため、激痛との再会を後伸ばしにする手段でしかありません。

医療技術が進歩しても、関節痛は克服しがたい難病なのです。

ですが今回、北米放射線学会で発表された新しい治療法によって、体の自由を保ったまま、関節の痛みを消し去ることに成功しました。

いったいどんな方法が使われたのでしょうか?

痛みの発信源を焼き殺す

「電波」で関節痛を取り去る方法が発表される!
(画像=体の自由を保ったまま痛みを発する神経だけを焼き殺す / Credit:RSNA、『ナゾロジー』より引用)

鍵となったのは、古来より用いられて来たヤキゴテでした。

ただし、用いるのは赤く熱された鉄塊ではなく、針と電波です。

患部に挿入された微小な針の先端に対して電波を浴びせることでピンポイントでの加熱を行い、問題となっている病変部分を局所的に焼き殺すのです。

この局所的な焼き殺し(アブレーション)は従来、手術の難しい心臓などに対して行われてきました。

しかし今回、研究者たちは、この焼き殺しが痛みの発信源である神経細胞に対しても有効であると考え、肩と股関節の関節痛に苦しむ患者に対して実験を行いました。

使用された針は長さが50ミリから150ミリであり、1分半の電波照射により、針の先端温度は80℃まで上昇。

その結果、肩に対しては85%の患者で痛みが減少し、腕の取り回しなどの機能が74%増加しました。

また股関節に対しては70%の患者で痛みが減少し、機能が66%増加したとのこと。

さらに驚くべきことに、治療による副作用は一切みられませんでした。

この事実は、局所的な神経細胞の焼き殺しが体の自由を奪わないまま、痛みの感覚だけを遮断したことを意味します。