去勢で寿命が6割のびる?

今回作成されたエピジェネティック・クロックは、羊を対象とした初のものであり、わずか5.1ヶ月の誤差で年齢を予測できました。

また、オスの羊、メスの羊、去勢された羊の老化スピードを比較することにも成功しています。

その結果、去勢された羊は、無傷のオスよりも老化速度が遅く、メスの羊と同程度になることが判明しました。

詳しく調べてみると、去勢された羊のメチル化パターンがメスの羊に近づいており、それが男性ホルモンの一種である「アンドロゲン」の産生を抑制していたのです。

アンドロゲンの減少が、老化スピードを遅めた大きな要因と見られています。

男性の寿命は「去勢」で延びるという研究
(画像=Meはメチル化の指標 / Credit: Victoria Surgue et al., eLife(2021)、『ナゾロジー』より引用)

研究主任のビクトリア・スグルー氏は「去勢された羊が、普通のオスよりも平均して長生きすることは以前から知られていました。

しかし、DNAの老化が遅いかどうかを実証したのは今回が初めてです。

おそらく、去勢された羊は、普通のオスより最大60%ほど長生きできる可能性があるでしょう」と説明します。

実際、シュレック(Shrek)という去勢された羊は、通常のオスの平均寿命より6年長い16歳まで生きつづけました。

また、同チームのティム・ホア氏は「今回の発見は、男性の老化メカニズム研究への新たな道を切り開くものであり、精巣を除去することで、人間の男性にも同様の老化遅延があらわれるかもしれない」と述べています。

チームは現在、マウスを用いたエピジェネティクス研究をつづけており、結果次第では、人間にも去勢が有効である可能性が浮上します。

やはり何かを得るには、何かを失う必要があるのでしょう。

提供元・ナゾロジー

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