今年発表された世界平均寿命ランキングでは、日本が84.3歳で堂々の1位でした。
一方で男女別に見ると、男性が81.5歳、女性が86.9歳とかなりの差があります。
これは日本だけではありません。どの国を見ても、女性の方が5年ほど寿命が長いのです。
この傾向は哺乳類に広く見られるもので、オスはメスより先に死ぬ運命にあるのかもしれません。
しかし今回、ニュージーランド・オタゴ大学(University of Otago)を中心とする国際研究チームにより、オスの寿命をのばす科学的な方法が示唆されました。
その方法とは「去勢」です。
研究は、7月6日付けで学術誌『eLife』に掲載されています。
目次
DNAの老化スピードを測る時計を作成
去勢で寿命が6割のびる?
DNAの老化スピードを測る時計を作成
研究チームはまず、DNAがどのように老化するかを理解するため、羊を用いて「エピジェネティック・クロック」を作成しました。そもそも「エピジェネティクス」とは何でしょうか?
動物のからだは心臓や肺、皮膚など、色々な器官からなり、それぞれは別の細胞でできています。
細胞はどれも同じ遺伝情報をもっていますが、これが別々の細胞になれるのは、”使う遺伝子”と”使わない遺伝子”にマークをつけているからです。
このマークを調べるのが、エピジェネティクスになります。

その主なマークが「DNAメチル化」という遺伝子につく目印です。
DNAメチル化は、DNAの塩基配列の中のシトシン(C)に、メチル基(-CH3)という分子がくっつくことをいいます。
とくに、CG(シトシン・グアニン)の配列が集中する領域(=CpGアイランド)の7〜8割のシトシンはメチル化されており、メチル化された遺伝子は使うことができなくなるのです。
DNAメチル化は、哺乳類のような複雑なからだを作るには欠かせません。
そしてDNAメチル化のマークにもとづいて、生物の老化スピードや年齢を測定するもの、それが「エピジェネティック・クロック」です。
チームは、これをオスの羊、メスの羊、去勢されたオスの羊のそれぞれで作成しました。
果たして、結果はどうなったでしょうか。