宇宙への適応は「マウスの革新」を促す

今回の研究により、親が経験した宇宙生活が、子の遺伝子の働きを変えることが示されました。
これは古い生物学の教科書に載っていた「経験は遺伝しない」という内容を真っ向から反証する結果です。
宇宙生活を強いられたマウスは、遺伝子のロック場所の変更を、精子を通して子孫に伝えていたのです。
この結論は、他で実施された調査の結果からも後押しされます。
宇宙マウスの精子細胞において11個のマイクロRNAも変化していたという結果が得られたのです。
マイクロRNAもまた、特定の遺伝子の働きを阻害するロック機能を有しています。
また興味深いことに、マイクロRNAの標的となった遺伝子には、細胞の多能性など受精卵で重要な機能を持つ遺伝子が多く含まれていました。
以上の結果から、宇宙環境は生物の生殖と遺伝に影響を与えうる可能性が示されたのです。
それはつまり、宇宙で育まれる次世代には、地上で産まれる次世代とは、何らかの違いがあるということでもあります。
宇宙に進出した人類の精神や肉体には、いったいどんな変化が訪れるか、気になるところですね。
参考文献
父親の宇宙空間の滞在経験が子の遺伝子発現に影響する -精子のエピゲノム変化が鍵?-
元論文
Intergenerational effect of short-term spaceflight in mice
提供元・ナゾロジー
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