「カレーハウスCoCo壱番屋」をチェーン展開する「壱番屋」は、直近の決算で純利益が前年同期比65%減の大幅な減益となった。もっとも、内容を見ると、数字上のインパクトとは裏腹に、前年同期にあった新型コロナウイルス禍の一時的な収益がなくなったことによる反動減の色合いが濃いようだ。

補助金収入が減少

壱番屋が2022年6月25日に公表した2022年3~5月期(第1四半期)の連結決算は、売上高が前年同期比2.0%増の112億8,700万円、営業利益が22.8%減の5億2,800万円、純利益が65.4%減の4億3,400万円だった。

3月下旬にコロナ禍の時短要請が全面解除されてから客数が少しずつ回復し、3ヵ月間の客数は前年同期比1.6%増となった。ただ、客単価は0.9%減となったため、オープンから1年以上を経た「既存店」の売り上げは0.7%増にとどまった。

何とか踏みとどまり、増収を確保した一方、減少が目立ったのは利益面だ。損益計算書を見ると、営業外収益として前年同期に3億4,508万円の補助金収入を計上しているが、今回は1億2,053万円に減った。経常利益、純利益は、これだけで2億円以上の減益要因となっている。

前年は有価証券売却で多額の利益

大きく影響したのは投資有価証券売却益で、前年同期は6億7,965万円だったものの、今回は計上がなかった。前年同期に4,192万円あった店舗の売却益は、ゼロである。

これら2種類の利益は、一時的な収益の意味で「特別利益」に当たる。特別利益は営業利益、経常利益を計算した後に加算され、純利益に反映される。2種類の利益が加わっていた前年同期は、平時に比べて数字が大きくなりやすく、その前年同期と比較すれば、今回の数字が小さく見えてしまうわけである。

それでは、今回の数字を2年前(2020年3~5月期)の実績と比べてみる。

期間 売上高 営業利益 純利益
2022年3~5月期 112億8,700万円 5億2,800万円 4億3,400万円
2020年3~5月期 103億2,700万円 3億3,000万円 2億5,300万円

2年前は新型コロナの全国的な拡大を受け、初めての緊急事態宣言が出た頃。当時が普段通りでなかったのは確かだが、売り上げ規模は現在と似ている。当時と比べると、今回の純利益は1.7倍の水準にある。

さすがにコロナ前に当たる2019年3~5月期の純利益は10億円を超えていて参考にならない面がある。しかし、こうして見る限り、今回が目立って悪いのではなく、むしろ前年同期の純利益が特殊要因で多すぎただけ、という見方もできる。

今期は過去最高の売り上げを見込む

昨今の外食業界はかつてないほど厳しいビジネス環境に立たされている。長引くコロナ禍で外食すること自体への抵抗感は根強く、感染状況によっては時短要請やアルコール類の提供自粛の要請が入る。

それに加え、足元では原材料費や資材費の高騰が収益を圧迫している。2022年3~5月期の決算資料でも、フライオイルや弁当容器の仕入れ価格が上がったことが、減益要因の1つになったと説明している。人手不足の中で人件費も上昇傾向にあり、営業する上での費用は膨らむばかりだ。

これまで分析したのは第1四半期に当たるわずか3ヵ月分の実績にすぎない。今度は、こうした逆風が続く中での年間業績や今後の予想を見てみる。

足元で進行している2023年2月期は連結売上高が518億円、営業利益が47億3,000万円、純利益が33億5,000万円になる見通し。このうち、売上高と営業利益は過去最高額の更新を見込んでいる。営業利益は売上高から経費を引いた本業の利益を示す。この営業利益が過去最高になることは、ビジネスが極めて順調に進んでいる証しといえる。

そもそも、これだけ外部環境が悪化している中にあって、壱番屋が赤字を計上していないことは特筆すべきことだ。それだけ消費者からの支持が厚いということだろう。2022年6月、同社は一部商品を値上げした。通常、値上げは消費者にとってネガティブな取り組みのため、客離れを起こす可能性もある。しかし、熱心なファンに支えられていれば、影響は多少和らぐと見られる。

無借金経営で健全

最後に、壱番屋の財務面を見てみる。

壱番屋は2022年2月末時点の自己資本比率が71.3%。借り入れを示す有利子負債の残高はゼロ、つまり無借金経営となっている。

筆頭株主はハウス食品グループ本社で、持ち株比率は50.9%。安定株主が多いことは、株価を気にして短期的な経営を余儀なくされる状況とは異なり、長い目で見て企業価値の向上に貢献できる事業展開にじっくりと取り組める。

これらの点から見えてくるのは、壱番屋は営業面でも財務面でも健全な企業ということ。壱番屋に限らないが、コロナ禍での業績の大幅な上下には惑わされないようにしたい。

文・MONEY TIMES編集部

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