目次
相続税の総額を計算
 ・計算上の取り分は「法定相続分」を使う
 ・それぞれの税額を算出し、合計する
実際に支払う相続税を計算
 ・相続税総額を実際に取得する財産の割合で分ける
 ・特例を活用する場合

相続税の総額を計算

遺産相続の税金を計算する流れを解説。知っておきたい特例も
(画像=『RENOSYマガジン』より引用)

相続税は、課税遺産総額に相続税率を掛けて求めるのではなく、「相続税の総額」を算出したうえで計算をするのがルールです。

流れとしては、「法定相続分に応ずる各法定相続人の取得金額」を算出したあと、「相続税の総額の基となる税額」を算出し、最後に算出税額を合算して「相続税の総額」とします。

計算上の取り分は「法定相続分」を使う

民法に定められた遺産総額の相続割合は「法定相続分」とよばれます。まずは、以下の法定相続分を基に、それぞれの取得金額を計算しましょう。

法定相続人法定相続分
配偶者と子ども配偶者:1/2子ども:1/2
配偶者と直系尊属配偶者:2/3直系尊属:1/3
配偶者と兄弟姉妹配偶者:3/4兄弟姉妹:1/4

子ども・直系尊属・兄弟姉妹が2人以上の場合は、均等に分割します。例えば、課税遺産総額が1,800万円で、配偶者と子ども1人で分ける場合は、配偶者が900万円、子どもが900万円です。

子どもが3人いた場合は、子ども全員で900万円を均等に分割するため、子ども1人につき300万円となります。

それぞれの税額を算出し、合計する

法定相続分に応じて各法定相続人の取得金額を計算したあとは、国税庁が公開する「相続税の速算表」を活用して、それぞれの相続税を算出します。

  • 相続税額=法定相続分に応ずる取得金額×相続税率-控除額
法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

ここでの相続税は、「課税遺産総額を法定相続分通りに取得した」と仮定した場合の税額です。「法定相続分」は、取り分の目安として国が定めたもので、必ずしも法定相続分に従って遺産分割しなければならないわけではありません。相続人の間で合意があれば、分割の割合は自由に決められます。割合によっては、実際の納税額とは異なることがある点に注意しましょう。

速算表で相続人ごとの税額を算出したあとは、それぞれを合算して「相続税の総額」を求めます。

参考:No.4155 相続税の税率|国税庁

実際に支払う相続税を計算

遺産相続の税金を計算する流れを解説。知っておきたい特例も
(画像=『RENOSYマガジン』より引用)

次のステップでは、「実際の受け取り分」に基づいた各人の負担分を算出します。相続税には個人の事情に基づいた控除や特例があり、相続税が大きく軽減される場合もあります。

相続税総額を実際に取得する財産の割合で分ける

相続税の総額がわかったら、「実際に取得した財産の額」に応じて、各人が負担する相続税を算出します。例えば相続税の総額が3,000万円で、配偶者(妻)と子ども2人で相続したと仮定しましょう。

  • 配偶者(妻):3,000万円×1/2=1,500万円
  • 子ども(1):3,000万円×1/4=750万円
  • 子ども(2):3,000万円×1/4=750万円

按分割合で計算すれば、課税金額は上記の通りになりますが、相続税には「配偶者の税額軽減(配偶者控除)」があります。

実際に取得した正味の遺産額が1億6,000万円以下、または配偶者の法定相続分相当額以下の場合には、配偶者に相続税はかかりません(相続税の申告書の提出が必要)。

そのほか「未成年者控除」や「障害者控除」など、社会的立場を配慮した控除制度があります。

参考:財産を相続したとき|国税庁

特例を活用する場合

相続で取得した財産の中に、相続開始の直前に被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の「事業の用」「居住の用」に供されていた宅地等がある場合、一定の面積までの部分は「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(以下、小規模宅地等の特例)」が適用されます。

相続税の課税価格を計算する際、「相続開始の直前における宅地等の利用区分」「要件」「限度面積」によって、その宅地等の評価額が50~80%減額されるため、相続税の負担は大きく軽減されるでしょう。

小規模宅地等の特例は、申請して初めて適用される制度です。適用可否の判断は複雑なものなので、相続税を専門とする税理士にサポートを依頼するのが賢明といえます。

参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁