目次
古典物理学の終わり
光電効果

光がとんでもない経路を通ることが3重スリット実験で実証される
(画像=Credit: stocksnap、『ナゾロジー』より引用)

素粒子を扱う時は、実数だけでなく「虚数」も用いた計算が必要である一方、虚数は、現実世界には存在しない「想像上の数」。しかし不思議なことに、私たちもまた、素粒子からできているはずです。

そんな私たちの根本となるものが、いまだに「物体」と呼べるかも定かでないといわれたら、なんとも興味が惹かれるというもの。

そんな量子力学の世界で、また一つの摩訶不思議な実験結果が出たようです。

2016年の暮れ、アメリカ、カナダ、メキシコ、ドイツ、の各大学の共同研究チームが3重スリットの実験に成功しました。

引用元: Exotic looped trajectories of photons in three-slit interference - nature

量子力学は日夜進化しており、最近実現法が発明された量子コンピュータだけでなく、量子テレポーテーションの夢にも近づきつつあります。

今回の3重スリット実験をはじめ、次々と実証される量子力学の不思議な世界を、順を追ってご紹介します。

古典物理学の終わり

3重スリット実験がなぜ重要なのかをはっきりさせるために、まずは量子力学の歴史を説明しましょう。

物理学の大進歩は、ニュートンの方程式にありました。この方程式で、リンゴが落ちる意味から月が地球の周りをまわる理由までが明らかになったのです。

当時はまさに「この方程式を使えば宇宙のことはすべて分かるぞ」といった雰囲気で、物理学者たちは大喜び。さまざまな現象を解明しました。

この大発見に、気の早い物理学者は就職情報誌を読み始めた……かどうかは定かではありませんが、19世紀の終わり頃には、ほんの少しのことを除きすべてが分かったとされました。残されたほんの少しのこと、それが光電効果です。

光電効果

光とは一体何なのでしょうか?

これはニュートン時代からの疑問でした。
光は、波なのか粒子なのか?

多くの物理学者は、光は波である、と思っていました。

その証拠が2重スリットによる実験です。

衝立に細いスリットを2本作り、そこに光を照射すると、反対側に干渉の縞が現れます。これは、波特有の性質だ。よって、「光は波である」と思われていました。

ただ、ここで光電効果という現象が立ちはだかります。
これは、波では説明がつかないのです。

光電効果とは、金属に光を当てると電子が飛び出す、という現象です。この現象は次のようになっています。

いくら光を強くしても、電子が飛び出ないことがあります。光の振動数を変えると電子が飛び出るのです。

光が波ならば、強くすればするほど電子が飛び出るはず。金属に張り付いている電子を、強い光で引きはがすのだ、と思うのが常識です。

しかし事実は常識には当てはまりませんでした。