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エッセンシャルワーカーが抱える課題
エッセンシャルワーカーへに行われている支援の事例

エッセンシャルワーカーが抱える課題

エッセンシャルワーカーの労働環境には、さまざまな課題が付き纏っています。コロナによりその言葉が広まると共に、今までスルーされていた問題も浮き彫りに。エッセンシャルワーカーが抱える課題と、現状どのような動きがあるのかをご紹介します。

低賃金

エッセンシャルワーカーが抱える1つ目の課題は、低賃金であることです。

エッセンシャルワーカーと呼ばれる方々のなかには非正規雇用も多く、最低賃金で働いている方も少なくありません。令和3年には地域別最低賃金額が引き上げられたものの、若者が自立し、健康的に暮らしていくには、月給で23万円前後、時給で1500円以上が必要といわれています。

もっとも高い東京でも、最低賃金は令和3年10月1日時点で1041円。いまだに800円台の地方も少なくなく、地域間格差は縮まっていません。

低賃金であることはコロナ以前から問題視されていましたが、コロナの影響でエッセンシャルワーカーの早急な賃上げ対応が求められるように。医療・看護や福祉、保育士など、一部の職業では賃上げ措置が行われていますが、すべての職業において大幅な賃上げ・底上げは実施されていないのが現状です。

参考:全労連「コロナ禍だからこそ 最低賃金」

参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構「エッセンシャルワーカーの賃上げを全体の労働者に波及させる取り組みを/国民春闘共闘の春闘方針」

労働環境や待遇

エッセンシャルワーカーが抱える2つ目の課題は、労働環境や待遇です。

エッセンシャルワーカーの多くは長時間労働を強いられていたり、長期間勤めていても給与が一定だったりと、厳しい労働環境で働いています。このような実態は、コロナ禍によりエッセンシャルワーカーが注目されることで、浮き彫りになりました。

これを受け、国民春闘共闘委員会は「2022年国民春闘方針」を確認。賃上げを求めるだけでなく、性別・雇用・年齢・地域・企業規模による差別をなくした均等待遇を求めたり、非正規労働者への一時金の支給を求めたりと取り組みを強化するとしています。

しかし、待遇改善はいまだ受け入れられてはおらず、労働環境や待遇は現状維持となっています。

参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構「エッセンシャルワーカーの賃上げを全体の労働者に波及させる取り組みを/国民春闘共闘の春闘方針」

参考:日経ビジネス「エッセンシャルワーカーの待遇、労働環境を過去記事から考察する」

人材不足による負担

エッセンシャルワーカーが抱える3つ目の課題は、人材不足による負担です。

低賃金であることに加え、劣悪な労働環境や待遇により、エッセンシャルワーカーは全体的な人手不足に陥っています。

例えば、エッセンシャルワーカーの職業のひとつである教員は近年、大幅に人材が不足していることがわかっています。令和4年1月31日に文部科学省が公開した「「教師不足」に関する実態調査」によれば、小・中学校の教師不足は令和3年始業日時点で合計2086人。これには、非正規の職員が増えていることも関係しています。

教育現場に止まらず、ほかの職業についているエッセンシャルワーカーも同様。人材不足が解消されなければ、すでに働いている方のタスクが増えたり、勤務時間が長時間に及んだりしてしまいます。待遇や賃金の早急な対応が求められます。

参考:文部科学省「「教師不足」に関する実態調査」」

参考:日本財団ジャーナル「全ては子どもたちの未来のため。教師の過重労働、教師不足と向き合う現役教師たち」

従業員のメンタルヘルス

エッセンシャルワーカーが抱える4つ目の課題は、従業員のメンタルヘルスです。

エッセンシャルワーカーは長時間労働や人材不足による負担の増加など、メンタルに不調を抱えやすい状況で働いています。また、コロナの感染症対策や社会機能を維持するために、コロナに感染する危険性と常に隣り合わせなのも特徴です。

そのため、心の悩みに加えて、職場や仕事に関する悩みを抱える方も増加。各地方自治体では、エッセンシャルワーカーを対象に「こころの相談窓口」も設けています。

エッセンシャルワーカーは社会機能や企業の活動の維持に欠かせない存在です。彼らの心身の健康状態の維持は、私たちの生活に直結する問題です。

参考:埼玉県「新型コロナウイルス感染症とこころのケア」

エッセンシャルワーカーへに行われている支援の事例

コロナ下でも最前線で活躍し続けたエッセンシャルワーカーに対し、国や企業はさまざまな支援を実施しています。数あるなかから、5つの事例をご紹介します。

医療従事者の宿泊施設確保や保育所で預かる子どもへの配慮を促進

厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部は、コロナウイルスの感染拡大による医療人材の減少を受け、複数の支援メニューを用意。医療従事者に対して宿泊施設を確保したり、医療従事者の子どもを保育所で預かる際に配慮を促したりと、複数の取り組みを実施しています。

参考:厚生労働省「新型コロナウイルス感染の拡大に対応する医療人材の確保の考え方及び関係する支援メニューについて」

医療従事者に慰労金を給付

厚生労働省は、医療従事者や病院で働く職員に対して最大20万円の慰労金の給付も実施。その他病院・診療所の職員に対しても、最大5万円の慰労金を給付しています。

慰労金を受け取るには申請が必要かつ、条件によって慰労金の額に変動があるものの、コロナウイルス感染拡大の最中、感染を食い止めるため奔走してくれた医療従事者に対し、感謝の気持ちを示す支援となりました。

参考:厚生労働省「「新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業」のご案内」

国内外のおよそ45万人の従業員に一時金を支給

イオン株式会社は、経営するスーパーやコンビニエンスストアなどで働く従業員に対し、1〜2万円の一時金を支給。コロナ禍においても来店客数が変わらないなか、通常の業務に加えて感染拡大を予防するための業務負担が増えていることに配慮し、一時金の支給を決めたといいます。

給付対象は、国内外の約45万人。支給総額は約60億円に上りました。

全国47都道府県を対象にSOMPOケアの介護職員に特別手当を支給

SOMPOホールディングス株式会社は、SOMPOケアの介護職員に対して特別手当を支給。1日3,000円(パートは時給に375円/時加算)とし、医療現場の最前線で働く従業員への感謝の気持ちを表す制度としてニュースになりました。

当初は7都道府県限定で実施していましたが、緊急事態宣言の発令と同時に47都道府県に展開しました。

参考:SOMPOホールディングス株式会社「新型コロナウイルス影響下におけるSOMPOの取組み」

ANAは雇用形態にかかわらず全社員一律で特別金を支給

全日本空輸(ANA)は、全社員に一律10万円の特別金を支給しています。コロナによって観光業の動きが止まり、会社として大きな影響を受けた全日本空輸。コロナ下でもお客様の衛生や安全をケアするため働いた従業員の努力に報いる制度として、ニュースに取り上げられました。