・東アジアで中国と北朝鮮の両国が核兵器投射能力を増大させてきたため、米国は従来の拡大核抑止策で自国と日本、韓国の両同盟国を同時に効果的に防衛することが難しくなった。その結果、米国の核抑止という責務を日韓両国に一部でも託すことが合理的になった。
・日韓両国が核兵器を保有すれば、中国と北朝鮮の核の脅威は東アジア地域内に制限され、太平洋を越えた米国本土への核の脅威は大幅に減少する。日韓両国ともに、軍事的にも財政的にも、自前の核兵器を開発し保有する能力は十分にある。
・米国にとっての同盟諸国への拡大核抑止の責務は、西欧ではすでに長年イギリスとフランスの核兵器保有によって分担され、旧ソ連あるいはロシアの核の脅威を効果的に抑えてきた。東アジアの同盟諸国も、米国にとっては同様に核抑止力保有を許すに足る信頼を蓄積してきたと言える。
・米国にとっての国際的な核抑止の負担は、すでにイスラエル、インド、パキスタンの核能力によっても軽減されてきた。これら3カ国の核能力は米国が核戦争に巻き込まれる危険性を減らすことになる。だが東アジアだけはその種の核の緩衝がない。
米国の韓国への「不信」
チェ教授は以上のように述べる一方、米国としては、日韓両国のうち、できることならば日本の核武装を優先すべきだして、その理由を以下ようにまとめていた。米国はまず日本を信頼すべきだと主張する点はきわめて注視される。
・韓国は1970年代に秘密裡に核兵器を開発しようとした際、米国に対して偽装や欺瞞、虚偽の言動を重ねた。このときの米側の対韓不信はなお完全には消えていない。一方、日本は安全保障政策に関して米国に対して不正な言動をとったことはない。