東アジアで中国と北朝鮮という米国にとっての2つの敵性国家がともに核兵器を増強し、米国とその同盟諸国への核の脅威を高めている現状では、米国政府は核抑止の責務の一端を長年の同盟相手である日本と韓国にも託し、両国の核兵器保有を奨励すべきときが来た──という趣旨だった。

 この刺激的な論文の筆者は朝鮮半島や東アジアの安全保障のベテラン専門学者でイリノイ大学政治学部教授のソンファン・チェ氏である。チェ氏は韓国生まれだが、幼少のころから米国民としての教育を受け、米国陸軍の士官となり、退役後は米国籍の学者としてジョージア大学、ミズーリ大学などで教職に就いてきた。1990年代から朝鮮半島情勢や米韓同盟などについての論文、書籍を多数執筆し米国学界に発表してきた実績がある。

 チェ教授は今回の論文で、東アジアの安全保障環境や米国の相対的な総合戦力が大きく変わったことを指摘し、米国政府が年来の同盟諸国への「拡大核抑止(核の傘)」の責務や機能を日本と韓国の核武装を奨励することにより分担する時期がきた、と提案していた。

 その提案では、米国の歴代政権はこれまで核拡散防止条約(NPT)に集約される核兵器の不拡散政策を堅持して、それなりの成功をおさめてきたが、東アジアでの核をめぐる状況が変わったと強調していた。

日本と韓国の核兵器保有をなぜ奨励すべきか

 そして日本と韓国の核兵器保有を許容あるいは奨励するべき理由として以下の諸点を挙げていた。