新しい物理理論の構築や質量の起源が解明される可能性がある

CERNの大型粒子加速器が大幅改修され再始動! 陰謀論者「7月5日に私たちは並行世界に飛ばされた!」
(画像=「質量の本質」はかつては哲学や中二病の範囲にあったが現在では先端物理学者が真面目に取り組む課題になっている / Credit:Canva . ナゾロジー編集部、『ナゾロジー』より引用)

最後に少し真面目な話をして終わりましょう。

新しくなったLHCに対して、真面目な物理学者たちが今後期待するのはどんな粒子の発見なのでしょうか?

まず多くの研究者たちが第一に挙げているのは、ほころびはじめた標準模型を超えて新たな物理理論をもたらしてくれる粒子です。

近年になって行われた2つの研究では、標準模型では説明できないような素粒子(ミューオン)の磁気特性や、説明不可能な素粒子(Wボソン)の質量が観測されています。

これら2つの異常は、まだ観測されていない超粒子によって説明できる可能性が高いと考えられています。

またヒッグス粒子同士がお互いに相互作用するかも重要な問題です。

ヒッグス粒子が結合したり未知の内部構造を持っている場合、全く新しい物理理論が作られることになるでしょう。

ヒッグス粒子によって形成されるヒッグス場は宇宙全体に形成されており、宇宙にあるあらゆる物体に質量を与えています。

ヒッグス粒子の解明が進み宇宙でヒッグス場が「オン」になった仕組みを解き明かせば、質量がない状態から質量がある状態に宇宙がどのように移行したかを明らかにできるかもしれません。

また初期の宇宙で物質が反物質よりも多くなった理由を説明するのに役立つ可能性もあります。

未知の粒子はロマンを感じる並行世界への扉にはならないでしょうが、宇宙の神秘や質量の本質など、同じくらいワクワクする不思議を解明してくれるでしょう。


参考文献

LHC Run 3: physics at record energy starts tomorrow

LHCb discovers three new exotic particles

Large Hadron Collider switches on at highest ever power level to look for dark matter

Conspiracy Theorists Think The Large Hadron Collider Transferred Us Into A Parallel Universe Yesterday

量子物理学の発見 ヒッグス粒子の先までの物語


提供元・ナゾロジー

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