サーバルという動物をご存知でしょうか?
2017年にアニメ「けものフレンズ」で擬人化されたキャラクターが話題となりましたが、実際にどういった動物なのかよくわからないという方も多いと思います。
サーバルキャットとも呼ばれるサーバルは、見た目もネコに近く非常に可愛らしいのですが、実はスピード感溢れる狩りをする肉食獣です。
今回はそんなサーバルを飼育している神戸どうぶつ王国へ取材を行い、飼育担当者である曽我安佑美さんに話を伺いました。また筆者自身もサーバルをたっぷり観察して来ましたので、その魅力を余すことなくお伝えします。
目次
サーバルの特徴は大きな耳と長い手足
飼育に危険が伴うサーバルは「準間接飼育」
サーバルの特徴は大きな耳と長い手足
サーバルはアフリカのサハラ砂漠以南に生息するネコ科の中型動物です。
個体差もありますが体長は1m弱、体重は10kg前後が多く、首や手足がすらりと長い細身の体格をしています。
ネコ科の動物では一般的なことですが、オスとメスで体格差があり、メスの方が少し小さめであることが多いようです。
神戸どうぶつ王国の個体は、メスが7.3kg、オスは9.7㎏とのことでした。
大きな耳は、獲物である鳥類や小動物の立てる小さな音にも反応し、長い手足を活かしたスピード感のある狩りで獲物をとらえます。
大ジャンプで鳥を狙う!サーバルの狩り
サーバルの狩りの強みは何と言っても驚異的なジャンプ力です。
野生下では飛んでいる鳥をとらえるほどのジャンプは、飛距離が3mにも及ぶと言います。
実際私が取材中に見ていたサーバルも2m以上ある渡り木まで一気に跳んでいて、上下も含めて縦横無尽に動き回るスピード感には目を見張りました。
サーバルちゃんみたいに好奇心旺盛?本当の性格は?
見た目は手足が長いネコといった感じでとっても可愛いサーバル。
その性格はどのようなものなのでしょうか?
けものフレンズのキャラクターであるサーバルちゃんのように好奇心旺盛で、フレンドリーな性格をイメージしていたのですが、実際のサーバルは少し違うようです。
飼育担当者の曽我さんは言います。
「あまり好奇心旺盛な様子は見たことがありません。少なくとも神戸どうぶつ王国の個体に関してはどちらかというと神経質な方だと思います。獣舎のレイアウトが少し変わっただけでも入るのを警戒している感じです。また、獣舎で顔を合わせると威嚇されることもあります」
どんなに可愛く見えても、サーバルは野生動物。
愛玩動物とは異なり、飼育には危険が伴います。
ではそんなサーバルの飼育を、動物園の飼育員さんたちは具体的にどのように行っているのでしょうか?
飼育に危険が伴うサーバルは「準間接飼育」
猛獣などに対し直接動物と同じ空間に入らない飼育を行うのが間接飼育ですが、私が取材に伺った神戸どうぶつ王国では、サーバルに対し準間接飼育が行われています。
具体的には、普段の飼育は間接飼育を行い、トレーニングなどのときのみ動物と同じ空間に入ることができるといった形です。
ただし、サーバルと同じ空間に入る際には、必ず飼育員2人体制をとり、1人は入口で待機して万が一の事故に対処できるようにしています。
また、神戸どうぶつ王国では、食事やトレーニング、展示場や獣舎の作りなど至るところでサーバルがのびのび暮らせる工夫が凝らされています。
鶏頭が大好き!サーバルの食事
前述の通り、普段は間接飼育を行っているサーバル。
展示場で食事を与える際はサーバルを獣舎に入れた状態で展示場に飼育員が入り、エサを配置していきます。
エサが高い位置の渡り木も含めて色んな場所にばらばらに配置されており、展示場に入ってきたサーバルは狩りをするようにエサをめがけて上に下にと飛び回ります。
エサは鶏肉と馬肉で、量は大人のメスで360gほど。鶏肉は肉だけでなく、栄養価の高い鶏頭も含むのだそうです。
「鶏頭は普通の鶏肉・馬肉より好んで食べます。骨ごとばりばりいっちゃいますね。」
野生下では鳥を好んで食べるサーバル、普通の切ったお肉では味わえない鶏頭ならではの味わいは本能的にたまらないのかもしれませんね。
飼育ストレスを減らすトレーニングも
神戸どうぶつ王国ではサーバルに対してトレーニングが行われています。
これは前述した通り飼育員が同じ空間に入って行うこともありますし、獣舎内で網越しに行うこともあるそうです。
飼育員がステッキを持ってサーバルの動きをコントロールするトレーニングはハズバンダリートレーニング(※)の一貫で、少しずつ進めていくことで健康管理の際のストレスを減らす効果が期待されます。
現在は展示場のリニューアルによってサーバルの動きの幅が増えたため、トレーニングは一時休止中とのことですが、こういった飼育動物の幸せを考えたトレーニングは動物と人間お互いにWINWINで素敵だなと感じました。
※ハズバンダリートレーニング
エサなどのご褒美をあげることで動物が自主的に移動する、採血のために手足を出す、口を開けるなど、動物が健康管理に必要な行動をとれるようにするための訓練のこと。
このような健康管理は従来麻酔を用いて行うことが多く、動物への負担が大きかった。
のびのびジャンプできる展示場
神戸どうぶつ王国では2022年6月24日(金)からサーバルの展示場がリニューアルされました。
上部を約1.5倍拡張することでサーバルの跳躍もよりダイナミックになり、のびのびと動き回れるようになったそうです。
飼育のストレスを出来る限り減らし、広い展示場となったことで思いっきりジャンプをできるようになったサーバルたちはとてものびのびして見えます。
「展示場が広くなったことで、大きなジャンプなどより野生に近い動きを見ることができるようになりました。お客様にはそんなサーバルたちを見て、野生の姿を感じていただきたいです」
新しい展示場では、天井からお肉を吊るして、サーバルがジャンプして食べるような展示も行えるのだとか。
大きなジャンプでお肉に食いつくサーバルを見れば、サーバルの美しい野生の姿を感じられること間違いなしです。
動物園ではのびのびと過ごして見えるサーバルですが、自然界で暮らす野生のサーバルたちは現在過酷な環境に曝されているようです。