南米ベルーの熱帯雨林に、「スリングショットスパイダー(Theridiosomatid)」と呼ばれる変わったクモがいます。

一般にクモは「造網性」と「徘徊性」に分けられ、巣を張ってエサがかかるまで待つのが造網性で、自ら歩き回ってエサを獲るのが徘徊性です。

しかし、スリングショットスパイダーは、造網性に分類される一方で、徘徊性顔負けの方法で狩りをします。

なんと彼らは、自らをパチンコ玉のように発射して獲物を捕まえるのです。

その仕組みについて、米・ジョージア工科大学が今回初めて調査を行っています。

目次
弾け飛ぶときの加速度は「チーターの100倍」以上
クモの巣は「3次元の発射台」
なぜ張力に耐えられるのか?

チーターの100倍の加速!?「スリングショットスパイダー」はパチンコのように”自らを弾き飛ばして”獲物をとらえる
(画像=引き金を引いた状態の「スリングショットスパイダー」/Credit: Lawrence E. Reeves、『ナゾロジー』より 引用)

弾け飛ぶときの加速度は「チーターの100倍」以上

チーターの100倍の加速!?「スリングショットスパイダー」はパチンコのように”自らを弾き飛ばして”獲物をとらえる
(画像=調査中の研究チーム/Credit: Saad Bhamla, Georgia Tech、『ナゾロジー』より 引用)

スリングショットスパイダーの体長は、驚くことにわずか1ミリしかありません。

それでも、射出スピードの加速度は、毎秒1300メートルに達しており、チーターの100倍以上に匹敵します。

さらに調査の結果、射出時のスリングショットスパイダーには、およそ130Gの負荷がかかっていました。

参考までにいうと、この数値は、戦闘機パイロットが気絶する寸前まで耐えられる限界負荷の10倍以上です。

一体、どのようにしてこれほどの爆速を生み出しているのでしょうか。

クモの巣は「3次元の発射台」

スリングショットスパイダーの巣は、大半のクモが作る平面的な巣とは違い、3次元の円錐形をしており、その山の部分から、一本の張力線がまっすぐ張られています。

イメージとしては、円錐形の巣がパチンコの持ち手で、張力線がヒモの部分、文字で表すと「一く」のような感じです。

それからクモは、後ろ足で張力線をたどっていき、巣をくの字に強く引っ張った状態でスタンバイします。パチンコのヒモを絞って狙いを定めている状態と同じですね。

そして、蚊やハエが近くを通った瞬間、引き金を引いて自らをバビュンと発射し、獲物を捕まえます。

研究チームのサアド・バムラ氏は「この天然のバネは、人間が作ったあらゆる材料のエネルギー密度をはるかに凌ぐ」と絶賛しています。