3333 科学的根拠に基づく医療の創始者

脳を回復させる「低温ショックタンパク質」とは

同チームは2015年に、シナプスの再形成を促す低温ショックタンパク質の「RBM3」を発見しています。

実験では、健康なマウスと変性疾患を持つマウスの体温を35度以下になるまで冷やしました。それから体を温めてみると、健康なマウスにのみシナプスの再形成が見られています。

原因は、RBM3が健康なマウスの体内で上昇し、変性疾患を持つマウスでは上昇しなかったことにありました。

その後、RBM3を人工的に上昇させることで疾患を持つマウスでも脳機能を修復できることが証明されています。

研究主任のジョバンナ・マルッチ氏は、この結果を受け、「RBM3の生産を促す新薬があれば、認知症の予防や回復に役立つかもしれない」と考えました。

しかし、ヒトの血中でRBM3が検出されたことは一度もなかったのです。

目次
ヒトの血中に初めて「RBM3」を発見!
「寒中水泳はしない方がいい」、その理由は?

ヒトの血中に初めて「RBM3」を発見!

世界初、”寒中水泳”をする人から「認知症を予防するタンパク質」を検出!
(画像=『ナゾロジー』より 引用)
世界初、”寒中水泳”をする人から「認知症を予防するタンパク質」を検出!
(画像=血中にRBM3を発見 / credit: depositphotos,『ナゾロジー』より 引用)

そこで研究チームは、冬眠のような低温環境がRBM3を生産する可能性に注目し、ロンドンで寒中水泳をするグループを対象に調査を行いました。

対照群として、同じ地域に住む寒中水泳をしない人々にも協力してもらい、血中のタンパク質を調べています。

2016〜18年の冬時期に実施した調査の結果、寒中水泳をする人の多くにRBM3の上昇傾向が見られたのです。ちなみに、寒中水泳をした後の平均体温は34度となっていました。

対照群には、RBM3の上昇や低体温も見られていません。

マルッチ氏は「冬眠する動物と同様に、ヒトも低温ショックタンパク質を生産できる証拠である」と述べています。