「昆虫はどうやってハネを手に入れたのか?」
この単純素朴な疑問について、これまで多くの説が発表されてきましたが、いまだ完全な解決にいたっていません。
しかし今回、アメリカ・ウッズホール海洋生物学研究所により、100年以上つづいてきた論争に終止符が打たれました。
昆虫は、祖先となる甲殻類の脚の一部を背中に移動させることでハネに進化させていたようです。
研究は、12月1日付けで『Nature Ecology&Evolution』に掲載されています。
目次
甲殻類の脚が「ハネ」へと進化していた
陸上生物の起源は「海」にあり
甲殻類の脚が「ハネ」へと進化していた
研究チームは、ハネの進化の起源を解明するべく、ミナミモクズ属(Parhyale)という甲殻類と、甲虫・ショウジョウバエの脚を遺伝的に分析しました。
両者の脚はいくつかのパーツに分節化されており、前者は7つの節、後者は6つの節からなります。
分析の結果、両者の脚の遺伝子は、足先から1〜6番目の分節までピッタリ対応していることがわかりました。

他方で、祖先となる甲殻類の脚は、昆虫のそれより節が2つ多いことも判明しています。
昆虫はこの2つの節をどこにやったのでしょうか。
研究主任のヘザー・ブルース氏が過去の文献に当たってみたところ、1893年の論文から「昆虫は胴に近い7番目の節を体壁に取り込んだ」という理論を見つけました。
さらに、1980年代の論文から「昆虫は脚の近部位(7節目)を体壁に組み込むだけでなく、祖先の甲殻類が持っていた脚の基部(8節目)を背中側に移動させ、ハネを進化させた」という理論が発見されました。

この8節目は、祖先の甲殻類では脚の一部になっており、ミナミモクズ属では体壁に取り込まれ、昆虫ではハネを進化させる土台になっていたのです(上図)。
ブルース氏は「私たちの遺伝子分析は、これら2つの理論を裏付けるもの」と話します。