原子力発電所や火力発電所に頼らず、自然エネルギーを利用した発電所を増やそうという動きが世界中で進められています。

その1つが風力発電施設ですが、鳥が激突する事故が起きるという問題があります。

長期的に考えた場合、野生動物へのリスクはできるかぎり避けたいというのは、多くの人が望むことでしょう。

この問題については、これまで風力発電機の配置を変えてみるとか、紫外線を照射して鳥を追い払うなどの対策が試されてきました。

しかし7月26日付けで科学雑誌「Ecology and Evolution」に掲載された研究は、鳥の衝突事故を非常に簡単な方法で劇的に減らすことができると報告しました。

その方法とは、回転する風力発電機の羽の1枚を黒く塗るだけなのです。

目次
風力発電所のバードストライク問題
鳥は回転する風車のブレードがほとんど見えない

風力発電所のバードストライク問題

風力発電機のブレードを「たった1枚だけ黒くする」ことで、鳥の衝突死が70%も減少!
(画像=Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

一見のどかに見える風力発電所ですが、回転しているブレードは1つが40m近くあり、全体の高さは100mを超える場合がほとんどです。

この風力発電については、猛禽類の衝突が主な環境問題の1つになっています。

風力発電が鳥にどの程度被害を出すかという問題については、まだ明確なデータがあるわけではありません。しかし、ノルウェーの風力発電反対派は、風力発電所内で毎年6~9羽のオジロワシが殺されていると主張しています。

現状ではそこまで大きな被害には感じないかもしれませんが、自然エネルギーへの依存度が増しつつある昨今、風力発電施設が将来鳥類に及ぼす被害は毎年1万羽を超えるだろうという試算もあります。

いわゆるバードストライクは決して無視して良い問題ではないのです。

鳥は回転する風車のブレードがほとんど見えない

風力発電機のブレードを「たった1枚だけ黒くする」ことで、鳥の衝突死が70%も減少!
(画像=Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

飛行機と鳥の衝突の問題はよく耳にする話題ですが、移動しない風力発電になぜ鳥がぶつかるのでしょうか?

それは回転するブレードの視認性の問題だと考えられています。

これはモーションスミアと呼ばれる現象で、速く動く物体は網膜が処理できなくなり、ほとんど見えなってしまうのです。

風力発電のブレードは時速300kmを超える速度で回転していて、この速度に達すると鳥の目にも回転するブレードは見えなくなってしまいます。

そこで、風車のブレードの視認性を上げればいいのではないか? と考えたのがノルウェー自然研究所の研究者Roel May氏です。